Impact Makerが創造する包括的解決とは

Impact Makerが創造する包括的解決とは

2016年9月14日
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提供:Impact HUB Tokyo

あの場を0から創った人は、一体どんな人なんだろう

企業やチームといった組織に限らず、何かしらの価値を提供しようと考えている個人においても言えることだが、自分が提供できる「価値」の考察は永続的な命題だろう。この価値を定義し創出することにおいて、ビジョンとリーダーシップという盾と矛を一人で持つ場合もあれば、共同経営という複数人でこれを分担して持ち合うスタイルもある。この”共同経営”というトピックは、”共同経営者同士はどう役割を担うべきか?”、”お互いにどういった関係性を持つことがベストなのか”、という点にフォーカスして議論されることが多い。

共同経営者のシナジーの質による影響は、対外的なところだけでなく対内的なところにも当然直接的に関与している。「あの場で働いている人」のもう一段上のレイヤーである、「あの場を0から創った人」はどんな人なのだろう、という疑問に対する回答が、対内的に提供されている価値にも結びつく「所属の源泉」を生むための非常に重要なポイントとなるからだ。

過去、弊誌では「働く事の源泉を生む、人と場の化学反応」という記事でImpact HUB Tokyoのホスト2人にインタビューした際、「働く上での価値」について聞かせてもらったが、今回はその価値を対内的に提供している経営層が一体どんな人”たち”で、一体どんなことを考えているのか、直接本人たちの頭の中を覗いてみた。

自分たちにとって”一番の価値”とは何か

社会にチェンジを起こしていく起業家たちのベースキャンプ、Impact HUB Tokyoを形作っているのは、槌屋詩野氏(Co-Founder, CEO / 共同創業者 & 代表取締役)と、ポチエ真悟氏(Co-founder & Director / 共同創業者&取締役)の二人。今回のインタビューでは、Impact HUB Tokyoという場を0から作り上げてきたお二人に「未来のビジョン」について伺った。

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Photo by Impact HUB Tokyo

➖ 槌屋さんとポチエさんは共同経営をされていますが、役割分担はどの様にされていますか。

ポチエ氏(以後、敬称略):僕はImpact HUB Tokyoの中での自分の役割は財務の他、「リスクを見ること」に特化して動いています。槌屋やホストのみんながプロジェクトに没頭している時、常に第三者的な視点で「それは危ないんじゃない?」と冷静に問いかけをしていくことが仕事です。今まではこの事業自体を黒字化することに時間を費やすことが多かったのですが、今は事業的に安定している分、様々なプロジェクトを槌屋と考え、実行することに時間を使っています。

➖ Impact HUB Tokyoという場で創るインパクトを考える上で、重要視していることは何でしょうか。

ポチエ:Impact HUB Tokyoは、物理的なスペースである以上、心の境界線の様な壁があるビジネスなので、まずはこの場に来てくれないと何かにつけてコラボレーションが発生しません。その性質上、「ここからスケールするインパクトはどの様に起こすべきなのか?」という問いを自らに投げかける日々が長く続いていました。考えた結果、「数や大きさ、すごい起業家を多く創出することなどは、僕たちにとって一番の価値ではない」という結論に行き着きました。社会問題を解決することを考えた時、1,000人の優秀な起業家がいても、結局課題の数の方が多いので、数だけ増やしても仕方ない。だとすれば、根本的にこれを解決できるシステムや仕組みをここで作るべきで、そういったものがどんどん生まれてくる場を創ることに価値があると考えています。

槌屋氏(以下、敬称略):この数が追いつかないという点に関して、解決方法を生み出すためには、「国境・壁を超えたインパクトってどういうときに起きるのか」「行動変容が起きる時の引き金になっているものは何なのか」など、こういった疑問に対して研究を行う組織が必要だと思い、OISYS(Open Impact System)という組織を発足させました。例えば、社会変革みたいな話になると、”対話して意思決定する”とか”リーダーシップを発揮すればいい”とかそういう話に行きがちなのですが、実証性重視できちんと数値を見たり、その数値同士の関係性を可視化したり、課題解決する上でデータサイエンス的観点を持つ必要があると感じています。今、このImpact HUB Tokyoの中に150人メンバーがいますが、その中でそういう解析ができるようなアナリストがいるので、”システムシンカーズ”と名付けた月1回のブレインストーミングイベントをポチエが行っていたりと、OISYS以外にも社会課題解決のための仕組みをどう作れば良いか、を考える場の創出を行っていたりもします。

Changeを作る人になるのか、Changeを見る人になるのか

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Photo by Impact HUB Tokyo

➖ 先程「社会課題解決のためにはシステムの理解が必要である」というお話をポチエさんがされていましたが、もともとどの様な背景があって、「仕組み」や「システム」といったところに関心を持ったのでしょうか。

ポチエ:世の中には「彼があそこでこう判断したのにはこういう事情があって・・・」という様な、個と個の複雑な関係性/相互依存があって、「あいつはあそこでそんな判断をして、本当に悪いやつだよね」ってなるのではなく、具体的に「なぜ彼がそうしたのか」という深いところにあるリアリティが知りたい、100%は無理だろうけど知りたいと思う、僕はそういう性格の持ち主です。”なぜ?”って思ってしまう。つまり、自分が疑問に思ったことはほっとけないんですよね。

ですから、みんなが口を揃えて「難しい」と頭を悩ませる問題が、日々止まることなく矢継ぎ早に生まれているという現実を見ていると、これをただ「難しい」と諦め放置するなんてことはできないんです。こういった課題たちには真っ向から対峙して、それを隠したり無視したりせず、その問題を解決する鍵、つまり仕組みを創出する努力を続ける必要があると常々感じています。

槌屋:スタートアップ育成プログラムを実施した時も、ちょっとしたことも見逃さないのが彼のスタイルで、その人が泣き出してしまうくらいの勢いで疑問点に突っ込んでいくんですよね。何か物事を始めたときの初期衝動はとても大事なことだと思うのですが、それを忘れて長いものに巻かれてしまっている人たちがそういった彼のフィルターを通してどんどん浮き出てくるんです。

➖ ある種、ふるいにかける様な通過儀礼なのでしょうか。

槌屋:彼のフィルターだけでプログラム参加者のアイデアの良し悪しをジャッジするつもりはないのですが、その問いを立てることで、面白いことにスタートアップの人たちが劇的に変化していくんです。「色々と迷っていたけれど、やっぱりこれが自分のやりたかったことだよね」と初期衝動にブレがあったと思い直し、以前にも増して自分のアイデアに真摯に向き合う人がいたりするのを見ると、一見荒療治に見えるかもしれませんが、必要な通過儀礼なのかもしれないなと感じます。このImpact HUB Tokyoという場所は、”Quetioning the Status Quo”(現状に疑問を抱くこと)を常に重要視して、問いを突き立てられる場所でもあります。”Why”を突き詰めることが大切だという理念を持ち、Questionに対してきちんとActionを起こして、その結果のImpactをしっかりと作り出すという方程式も、こういった過去を積み重ねてきたからこそ生み出せたのだと思います。Impact HUB Tokyoの壁に描かれている「Question+Action=Impact」がまさにそれを体現している言葉です。

➖ この場に参加してくる人たちだけでなく、槌屋さんやポチエさん、Impact HUB Tokyo自体にも常に問いを突き立て続けているのですね。

槌屋:そうですね、この3年の間にいろんな変化を見てきて、「変化・変革って一体何だろう?」という問いについてよく考える様になったのですが、これに紐付いて、以前掲げていたChange Makerという言葉自体を改めて見直すことを始めました。

ポチエ:これについては、「Changeを作る人になるのか、Changeを見る人になるのか」という問いを掲げつつ、インパクトとは何かという根源から考えることを始めました。例えば、インドの農村で働いている子供達のために学校を作って行かせようというアイデアは一見よく見えますが、それが実現した後、それまで子供達が耕していた畑は次に誰が耕すの?という課題がまた発生します。その場の課題は解決できても、次に出てくる課題までは囲えていないということになるので、そのアイデアでは僕たちの考えている様なインパクトは生まれないということになります。つまり、課題をずらすのではなく包括的な解決をすること、これが前向きな影響力を持つインパクトを生むためにまず考えなければならないポイントです。

槌屋:ソーシャルスタートアップでもデザインシンキングの悪い面が出ていて、彼が言っている”前向きな影響力を持つインパクト”にならない事例と似た結果を生んでいる現実があります。問題を棚卸しして定義して、その問題を解決するものをサービスとして提供するというやり方をとっていることが多いのですが、「リーンキャンバス」や「ビジネスモデルジェネレーション」のフレームワークだけで考えると、そのソリューションが脅かす周りのシステム全体についての配慮がされていないことが非常に多いのです。

ポチエ:つまり、「昨日のソリューションは今日の問題になっている」ということです。

Change Makerから、Impact Makerへ

➖ Change Makerという表現は今どの様に変わったのでしょうか。

槌屋:前述したものも含め、「前向きな影響力を持つインパクトとは何だろう」「Change Makerという表現は本当に適しているのか」という問いに対して向き合い続けた結果、1年前くらいからChange Makerではなく「Impact Maker」をImpact HUB Tokyoから創出したいと思うようになりました。

ポチエ:以前は”前向きな影響力を持つインパクトとは何か”という問いにフォーカスして考える事も多かったのですが、Impact HUB Tokyoとして実験的な事をして様々な価値を創出できる場でありたいので、”インパクトを生み出す人が集まってくる場”に”実際にインパクトを実行できる人”が集まってほしいという前提のもとに、良い影響も悪い影響ももしかしたらあるかもしれないけれど、”社会に影響を与えることができる人”が沢山ここに集まれば良いなと思っています。つまり、「良いことだけをする人だけが集まらなくていい」という事です。

➖ Impact Makerたちが実際に集まった時には、どういったシナジー生成の促しをされるのでしょうか。

槌屋:今の段階ではオペレーションシステムなどもあまり他のコワーキングスペースと変わらないのですが、以前に比べ、この場に集っている人同士で”一緒に仕事をする”事が多くなってきているという目に見える変化があります。将来的なお話をすると、Impact HUB Tokyoという場で、そういった「一緒に」作り出しているものを可視化するテストや、アウトプットの見える化に対して様々な試みをしています。これを仕組みとして持つ事が出来れば、「この人はこんなことやってるんだな」とお互いに知る機会が増えるので、自然と人が繋がっていく様なフローを内部に確立できると思っています。

ポチエ:やりたい事を軸にこの場に参加している人々を横で繋ぎ、大きなインパクトが生まれる様なコミュニケーションハブを作っていく事を念頭に置いて、人とアイデアと案件が集まるバザール的なこともしたいと考えています。そこにテクノロジーを使った仕組みを入れるとそれがBOOSTされるのではないか、などインパクトを創出したい人やアイデアを持っている人の背中をどう押せるか日々考え、実験し、組み立てる事をしています。

➖ 今後Impact Makerの背中押しになる取り込みを行っていく上で、過去と比べて組織的な編成も変わってきているのでしょうか。

槌屋:3年間で仮説を立て様々な検証を行ってきた結果、今、Impact HUB Tokyoは「再起動(リブート)」のタイミングに来ていると思っています。バージョンを1.0から2.0にして3年で溜め込んだ武器で再起動する、というイメージです。例えば、チーム自体の構成も今変えようとしているという動きもありって、それが現在の人員募集にも繋がっています。3年前もは、プロジェクト単位でこういった場づくりに参加してくれるフリーランスを探したのですが、全く該当者がいなかったのです。というのも、こういう場づくりができるスキルセット自体が日本に存在していなかったので、色々な人たちが「参加したい」と問い合わせしてくれたのですが、中々マッチングする人がいなくて、貢献できるレベルも非常に低かったのです。私たちには、継続的に毎日少しずつこの空間をよくしていくことを丁寧にやれる人を育てないといけないという課題があったので、人員を削減し、全員正社員にした時期もありました。しかし、しばらくすると、運営している側のメンバーが固定されてしまう現状もあったので、もっとチーム自体を多様化しなければいけない、とも思いました。最初の立ち上げをするときは大きな求心力が必要だったけれど、今はある程度そのステージも終わったので、チームのボーダーなども実線ではなく点線でも良くなってきました。組織の形自体も自分たちのフィロソフィーに合わせて変えようとしているのが、今のステージです。

人とのつながりを加速し、化学反応を呼び寄せる場

ここ3年間、何が今この場に必要なのかをストイックに突き詰め、アイデアを持つImpact Makerたちを創出してきたImpact HUB Tokyo。課題解決のための社会システム構築をするため、OISYS(Open Impact System)という研究組織の発足に始まり、データサイエンス、アウトプットの可視化と次なるステージのための武器を揃え、化学反応を起こすだけでなく、化学反応を呼び寄せそれを昇華させるという「新たな価値創出の場」への道筋を着々と整えている。

社会にチェンジを起こしていく起業家たちのベースキャンプから、「社会にインパクトを起こしていく起業家たちのベースキャンプ」に姿を変え、急速に歩を進めているこの場は、毎日新鮮なアイデアが飛び交い、先進的なディスカッションが発生し、普段出会えない様な刺激に溢れている、”前向きな影響力を持つインパクトの源泉”なのだ。

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