リアルゲイトのオフィスはなぜウケるのか

リアルゲイトのオフィスはなぜウケるのか

2016年7月15日
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先月6月に発表された、100カ国以上の合計約40,000人のビジネスパーソンを対象に行われたコワーキングスペースに関する調査では、レンタルオフィスやコワーキングスペースを長期的に企業戦略として採用していると、世界各国の回答を合わせた平均で67%、日本では63%の企業が回答した。ITテクノロジーの進化とともによりビジネスが高速化するのに合わせ、オフィスにおいても「会社を持続的に成長させるため、レンタルオフィスやコワーキング契約を更新している」「賃貸契約よりも短期で契約できる」といった理由から、それらの場所が好まれているようだ。実際に東京都内にあるシェアオフィス、コワーキングスペースを150個までは数えることができた。オフィスの一部をシェアスペースとして開放している企業も増えており、かなりの人、チームそして企業が自分(たち)だけの空間ではないところで働いていることから、それ以上数えることはもはや叶わなそうだ。
おしゃれなシェアオフィスとして、2010年に竣工したtheSOHOは世界最大級のレンタルSOHOオフィスとしても、トランジットジェネラルオフィスグループの中村貞裕氏をはじめ、藤原ヒロシ氏、蜷川実花氏などの豪華プロデューサー陣が参加したことからも大きな話題になった。今回話しを伺ったリアルゲイトの岩本 裕 代表はこのtheSOHOのプロジェクトをはじめ、現在では青山や表参道、原宿、中目黒など、都内27箇所にクリエイター層をターゲットにしたシェアオフィスを展開している。日本におけるシェアオフィスの急先鋒である岩本氏に、日本のシェアオフィス、そして業界をリードするリアルゲイトがいかにしてクリエイター層に支持されるようになったのかを聞いた。

岩本 裕
東京都市大学(旧武蔵工業大学)工学部建築学科卒業。一級建築士・一級建築施工監理技士・宅地建物取引士。ゼネコン・デベロッパー勤務を経て、2009年8月「リアルゲイト」を立ち上げ代表を務める。世界最大級のSOHOビル「theSOHO」の開発企画・運営にはじまり、シェアオフィス「PORTAL POINT」「kurkku home」、デザインオフィス「PEGASUS AOYAMA」「THE WORKS」等、クリエイター層をターゲットとしたオフィスのプロデュース・運営を手掛ける。現在、都心部を中心にマスターリースもしくはプロパティマネジメント業務を受託。立地、デザイン、サービス、そしてコミュニティといった不動産に関する様々な価値に一貫性を構築し、オンリーワンの不動産商品を創造する。

-まず最初に、リアルゲイトは多数シェアオフィスを展開していますが、そもそもなぜこのビジネスに着目したのでしょう

岩本氏(以下、敬称略) 10年前にマンションデベロッパーを勤めていた頃、お台場のtheSOHOプロジェクトを担当していました。theSOHOでは単なる400室のSOHOのマンションではなく、40平米ほどの小規模オフィスの集合体にして、お風呂やシャワー、ビリヤード、バー、受付をシェアする、というアイディアから企画・プロデュースが進む中、物件の完成間際にリーマンショックにより、当時勤めていた会社が経営難に陥り、theSOHOが他の会社に譲渡されました。theSOHOのプロデュースをしていたトランジットジェネラルオフィスグループの中村とグループ内に不動産会社を作り、theSOHOの運営を請け負いました。これが7年前で、リアルゲイトとしてスタートした最初の案件でした。

-会社として最初の案件が、シェアオフィスだったということですね。theSOHOはどんなアイディアから実現したものなのでしょうか。

岩本 10年前は、湾岸、芝浦エリアにマンションがものすごく建っている時期で、ぼくはこれらを売っていました。分譲マンションは法人登記できないけれど、家の中で仕事したいという希望もすごい増えていて、在宅で仕事をしたり、1人から4人で会社を立ち上げて仕事をする人が増えてきていました。時代的にはiPhoneが出たりしたタイミングでもあったんですね。それだけニーズがあるなら、マンションじゃなくて、小規模オフィスの集合体をつくったら流行るんじゃないかと考えたのがきっかけですね。
これを企画する上で、NYやロサンゼルスにどういう働き方をする企業があるのか中村と見てまわりました。日本で当時トップランナーと言われているクリエイターを20人ほど集めて、若いころにどんなオフィスがあったらよかったかヒアリングを重ねました。小さい会社だったら宅配便等を受け取ってくれるとか、アイディアとなる本が読めるとか、お風呂があったらいい等の意見を聞いて、それを反映したものがtheSOHOです。

-トランジットグループの中村社長とはどんな関係だったのですか?

岩本 前の不動産会社でtheSOHOを企画しているときに、広告代理店にクリエイターのキャスティングについて相談していたら、中村がクラスカをプロデュースしていて、これからはこの人がブームを作っていくんじゃないかと言われました。実際にクラスカを見てみて、クリエイターが集まる世界観だなと感銘を受けました。それからtheSOHOを一緒にやることになり、屋上にジャグジープール、エントランスにビリヤード置こうと、当時は人のお金だと思って好き勝手言って、と思いました(笑)企画している最中にはなかなか納得できませんでしたが、中村にNY、ロスに行くからついてきてくれと言われて、SOHO地区やウエストハリウッドのリノベホテルなどを見てカルチャーショックを受けました。自分が映画で見ていたような、こんな世界が本当にあるんだ!とNYに憧れる日本人は多いと思いますが、なぜ自分はこの世界をいままで知らなかったのか、この人の言うことを聞いてみれば、本当にこれが流行るかもしれないと思うようになりました。それで一緒にプロジェクトを進めていって、彼と一緒ならいい会社が作れるんじゃないかと、トランジットグループの中に不動産会社を作りましょうとなったんです。そもそも大きい案件だと1人2人の会社は受けられないですしね。

-先ほどオフィスを拝見しましたが、一般に抱く不動産屋さんのイメージとはまったく違いますよね。

岩本 1杯500円のコーヒーを売るために、コーヒショップは味はもちろん内装や服装や音楽にすごくこだわっていると思いますが、不動産屋は1億円の物件を売るのに、スーツを着た黒ずくめのおじさんが売ってるわけじゃないですか。不動産は黒ずくめのスーツを着なきゃいけないみたいなのがあったんです。我々はもっとエレガントに案内しようとしています。不動産と新しいカルチャーを組み合わせたらうまくいくんじゃないかと、クールな不動産屋さんが作りたかったんです。

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インタビューをおこなったPORTAL POINTはリアルゲイト本社も入っている

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内装がとにかく洒落ている

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シェアスペース

-話が少し戻りますが、当時のtheSOHOの盛り上がり方はどんなものだったのでしょう。

岩本 当時業界内では自殺行為と言われていました(笑)400室、お台場のあの場所で埋まるわけがないと。当時の不動産の状況だと、開発して建て終わるまで3年くらいかかっていたので、土地を買ったとき景気が良くても、建て終わるころにはバブルがはじけていることが多かったんです。これをどうにか埋めるのがリアルゲイトの起点で、厳しいスタートでした。リーマンショック後、不景気でしたが1年間で400室をなんとか埋めました。このときから起業する人は増えている印象でしたね。

-theSOHOをはじめ、リアルゲイトが展開するシェアオフィスはなぜクリエイター層をメインターゲットとしているのでしょう?

岩本 クリエイターを狙っているというのはマーケティングの一部でもあるわけですが、クリエイターと言っても、何業がクリエイターかという定義は決まっていないじゃないですか。おしゃれなことを考える人が住むと、それに近しいことを考える人が集まってきますよね。たとえば、弁護士とゲームクリエイターで業種はまったく違うにしても、マインドはどちらもクリエーターだとすれば、そういう人の集合体が醸し出す空気感はすごく居心地がいいです。そういう人たちを集めるためには、圧倒的なデザイン、物件が必要で、誰しもに向けたオールマイティなものだと値段で比べるしかないありふれたふつうの空間、オフィスになってしまうけれど、クリエイターに向けた本物の仕様、エッジの聞いたデザインにすることで、いい集合体になって、化学反応がどんどんうまれていくんです。実際に、入居者同士のコラボレーションが非常に多く、コミュニティも多数生まれています。

イントロダクションムービーはPORTAL POINTを利用しているクリエイターとのコラボレーション

-シェアオフィス部分も拝見しましたが、すごい良い空気感ですね。かなり大きなスペースを借りている企業もあるんですね。

岩本 ぼくらが提供しているオフィスの需要はスタートアップだったりチーム向けの小規模オフィスばかりだと思われる方が多いが、10人ほどで始めたが会社が1,2年で60人の規模に拡大したあとも、雰囲気がいいといってこの場所で拡大するスペースが空くまで待ってくれていたりします。中小規模のクリエイティブなオフィスの要望が非常に高まってきていて、部屋が空いたときは倍率が4~5倍になったりもしますね。

-他のシェアオフィスだと、はやくチームを拡大して巣立っていって欲しいと言っているところもあったり、規模を拡大して他のオフィスを構える企業が多いと思いますが、拡大したあともシェアオフィスにい続けるというのは珍しいですね。

岩本 1人から4,50人ほどの規模の様々な会社が入っていて、それらのミックス感を居心地がいいと感じてくださっているようです。毎月毎月イベントがあったり、過度にコミュニケーションをとったりするのではなく、あくまで仕事が第一で、適度な距離感を持った空間づくりを心がけています。グループ会社のトランジットがパーティ、アパレル、飲食にアンテナが高いので、必然とそちらにナレッジが溜まっていきます。テナントのカルチャーを理解しないと、入ってくれないし、単なる不動産屋さんではなく、杓子定規に箱貸しで、原状回復がいくらで、という話ではなく、ぼくらの自由度がいいと思って入ってくれていると思います。

-クリエイターにウケるために意識していることはなんでしょう。

岩本 ドアや天井、椅子、照明、どれをひとつとっても、本当に細部にまでこだわっています。たとえば、量産品の椅子を買ってきて済ませちゃえばいいというところもあると思いますが、ビンテージの電球、扉は新品のものを古ぼけた鉄塗装にしたり、ドアのノブの塗装も使い込まれたような加工にしています。オフィスというのはシンプルに人に見せたくなるものだと思います。1人だと実際はデスクひとつあれば足りるかもしれませんが、大きいラウンジや受付、会議室があって、こういうところで働いているというのはひとつステータスだと感じてもらっています。家と違ってオープンに見せ、こういうところにオフィスを構えているというのを堂々と言って欲しいんです。それがベタにかっこいいだろうという自慢になってしまうような、高級車や高級時計を纏う不動産屋が提供する空間ではなく、おしゃれな雰囲気のある空間だからこそウケるのだと思います。誰しもに好かれる万能のものを狙っているのではなく、これはひとつの趣向でしかないけれど、それが好きな人が集まってくれています。

-御社のようなおしゃれなシェアオフィスもひとつの形で、現在いろいろな形のシェアオフィスがありますが、今後シェアオフィスはどうなっていくのでしょう。

岩本 シェアオフィスは増えるところまで増えていて、たとえば渋谷駅周辺の徒歩圏内には20から30ほどのシェアオフィスがあります。逆に潰れているところ、閉鎖しているところも出てきています。起業する人が延々増え続けることはないし、需要から考えるとシェアオフィスが成り立つ数は一定で決まっているはずです。いろいろなシェアオフィスがあるなかで、ゆるいおしゃれな感じ、ものづくり系、IT系等、特徴がかなり出てきています。今後はより趣向に合わせて生き残りをかけていく形になるのかなと思います。

-リアルゲイトとしては今後どうなっていくのでしょう。

岩本 いまでは英語対応の物件を増やしたり、専有部のオーダーメイド対応などを増やしたりしています。不動産の有効活用のひとつがシェアオフィスであって、シェアオフィスの中で大小様々な規模の区画をそなえ、さらには店舗やホテルなどいろんなものが入っていてもいいと思います。今、店舗や宿泊施設を取り入れた複合施設も計画しています。

-不動産での地域再生を目指しているというのが会社の姿勢で、そのひとつがシェアオフィス、という形ですね?

岩本 シェアオフィスを主とした施設の一画に飲食店を誘致したり、イベントスペースを設けるなど、ブームを乗り越えていくトランジットジェネラルオフィスグループの力に加え、不動産でありながら、時代の流れを読み取り、身軽に業態を変えていける力がリアルゲイトの強みです。不動産業でありながら、それぞれの時代に合わせて、展開していくものを変えています。大きい会社のようにどーんと大きいことを立てて展開するのではなく、困った物件や地域に対して、時代のニーズをとり入れながら活性化させるのがわれわれの役目だと思っています。

-これは難しいなという物件はありましたか?

岩本 毎日いろんな相談を頂く中で、年間5,6棟のペースで物件をオープンし、現在では27棟のシェアオフィス等を展開しています。デザイン性も価値も高いアパレル店舗の出店でも、売れるエリア、売れないエリアがあると思います。デザイン力やクリエイティブ力が賃料に化けないエリアではちょっとむずかしいし、われわれの強みが発揮されない。世界観が出しきれない建物やエリアの仕事はむずかしいですね。

-では、今後もすでに展開しているエリア(原宿・表参道・青山・中目黒など)が主戦場になりそうですね。

岩本 ただ、最近は丸の内、日本橋エリアのプロジェクトも増えていきそうです。本来であればそこにいた層が青山、原宿エリアに流れてきていて、特にクリエイティブな企業が丸の内エリアではなく、青山エリアにオフィスを構えることが多いので、それを丸の内エリア、日本橋エリアに呼び戻そうというプロジェクトの相談が増えてきています。

-今後はリアルゲイトはどんなことを展開していくのでしょう。

岩本 いま力を入れているのは健康です。入居するテナントも東京オリンピック開催決定以降、スポーツ関連の企業も増えています。やっぱり行き着く先は結局健康だと思います。クリエイターは時間的にきつかったりするため、〆切に追われて寝れなかったりということも多いですしね。私たちのオフィスでも朝ヨガを企画したり、健康的なお弁当の配達会社と提携するなど、健康に気を遣った企画を増やしています。シェアオフィス≒入居者交流会(飲み会)という考えはもはや古いですね(笑)
そしてグローバルな会社に。世界に出るというよりは、世界の人を受け入れたいと思っています。不動産業界は外国からの人を受け入れなかったり、結構閉鎖的だったりします。英語が話せればコミュニケーションはとれるし、東京オリンピックに向けて、東京で起業する海外の事業主も増えてくるので、そこの需要を押さえていきたいと思っています。

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