実験と事件が生んだ次の一歩を導く知識

実験と事件が生んだ次の一歩を導く知識

2016年5月27日
Facebook Twitter このエントリーをはてなブックマークに追加

フリーランスは増えている?減っている?

キャシー・デビッドソン教授が”2011年度に米国の小学校に入学した子どもの65%は、大学卒業時に今は存在しない職業に就くだろう”という大胆な予測をしてから、それを後押しする様に新たな職種で何が生まれるのか、それに紐付いて新しい働き方はどの様なものが予想できるか、といったトピックに対して各所で意見が飛び交う様になった。現代において、「何を自分の生業とするのか」だけでなく、「何を自分に適した働き方とするか」というトピックはすでに様々な場所で語られる様になり、今自分が携わっている仕事に対して見直したり、考えたりする人がそれに比例して増加している。

新たな職種が生まれるかもしれないという話題とは裏腹に、以前から長く存在している職種でここ最近顕著に増加しているものがある。それが”フリーランス”だ。フリーランスは特定の組織に所属せず、自らが持つスキルを提供することで対価を得る個人事業主のことだ。ランサーズ株式会社が実施した「フリーランス実態調査」によると、現在、広義でのフリーランス数が1,064万人、昨年度対比で17%増加している。米国が1年で2%の増加率であるのに対し、日本はそれを超えたフリーランス増加率をマークした、という比較も興味深い。

今回弊誌がインタビューした黒田氏は、その増加傾向にあるフリーランスという職種で働いている人物だ。ただ少し違うのは、自身を「文系フリーランス」と称し活動しているという点である。新規事業ディスカッションパートナー(NBDP)、ビジネス顧問、インサイトハッキング、デザイン思考による事業創造ファシリテーション、社内研修セミナー講師、と様々な肩書きを持っている彼が、これだけの数の肩書きをどう一人でさばいているのかも気になるところではあるが、まずは彼が何故フリーランスの道を選んだのか、その経緯について伺った。

「文系」と言い切ることで呼び込んだ変化

-黒田さんは「文系フリーランス」と名乗っていますが、ご自身のことをずっと文系な人間だと認識していて、この様な表現にしているのでしょうか。

黒田氏(以下、敬称略) 実は、自分はずっと理系の人間だったんです。周りからも教授や研究者になると思われていましたし、自分もそうなるんだろうなと思っていました。でも、その途中で理論よりも実用に重きを置く実学に興味が湧き始めて、それからは、相対性理論などいつの時点で役にたつのかがイメージしづらいものを生み出すよりも、すぐに世の中の人の役にたつものを作りたいという想いの方が強くなったんです。それからは人の購買心理を紐解きたくて心理学を学び、人間心理について掘り下げたりする様になりました。

-文系とうたってはいるけれども、実は理系とのハイブリット型だったのですね。

黒田 そうですね。文系とうたっているのは、自分自身の感性を強めたいから、という想いも影響しているところです。例えば、”AとBという前提があった時にCである”という公式に当てはめて考えるよりも、答えを決めつけずにC以外の結果も柔軟に想定できる頭になりたかった。

-フリーランスへ転身されるまでのキャリアについてお聞きしたいのですが、もともと黒田さんは過去に一度起業されていますよね。

黒田 そうです、ITベンチャー会社で社長を務めていました。クライアントの数だけ人が必要という労働集約型の事業をしていました。仕組みや自社組織を拡大するための体力を作るルートもなかった時代なので、とにかく人が足りなかったという記憶があります。スタイルとしては、どっぷり一社に入り込んでやる形で、案件に入る時は完全にその組織の仕組みや人間関係などがわからない状態の中で中間管理職の様な業務を担当していました。そのため、自分よりも年上の関係者を何十人も一堂に集めて、気をかなりつかいながらプロマネをやらねばならないという状況もあったりと、当時26歳くらいだった自分にはプレッシャーののしかかる日々でしたね。

当時の失敗経験から今のフリーランス業に活かせているところ、変化があったところなどを教えてください。

黒田 とあるポイントシステムの開発案件で、予定していた開発期間におさまらなかったことがあり、関係者がとにかく多いことによるコミュニケーションコスト増加が原因で調整に失敗しました。この経験があってからは関係者は極力絞りこむようになりましたし、利害関係を客観的に見れるようになったのでコミュニケーションが円滑に図れるようになりました。いわゆる、交渉力が身についたのだと思います。当時は人にフォーカスして動くことが多かったのですが、フリーランスになってからは客観的に組織を見るようになったので、様々な企業に関わることで行動幅が抑制されてしまうのではなく、共通項をたくさん見出すことができるという強みに変えることができました。と、同時に失敗のパターンもだいたい見えてきているので、対処もスムーズになったと感じています。つまり、自分と組織との距離をどう取るか、その感覚が変わったのだと思います。

転身の理由となった”実験”と”事件”

-起業した後、その会社を閉じてからは何をされていたのでしょうか。

黒田 その後は学生と会社をつなぐ就活支援・マッチングサービスを展開している会社へ就職しました。そこで働いている時に、”デザインもプログラミングもできないフリーランスは食べていけるのか?”という疑問を当時持っていたので、日本のキャリアの多様性を高める上でも”成果物のない仕事”でも生計は立てられるかどうか自分で実験したい、と考えていました。ですので、もともとフリーランスに関心はあったわけです。その矢先に、”フリーランスになる必要に迫られる”事件も起きました。

-そうせざるを得なかった事件とは何でしょうか。

黒田 前職で働いている時に体調をすごく崩してしまったのですが、その際に自己免疫疾患になりました。自分自身、この病気にかかることで人生で初めて”死”というものを身近に感じましたし、今までよりも強く意識する様になりました。勤め先ではこれを受けて勤務時間を短くしてくれたりと色々と対応をして頂いてとても感謝したのですが、やはりそれもずっとそのまま続けるわけにもいきませんよね。当時から決めていた”フリーランスになる”という選択が”実験”と”事件”によって後押しされるという形になりました。

-それは大きな転機でしたね。”自分の生存戦略”を探す試練も同時に降ってくるという…。

黒田 そうですね、ただ当時からなかなか文系領域でのフリーランスが増えてこないという課題を解決したいという気持ちはありましたし、文系フリーランスの人たちをもっと増やして、自分の仲間を増やしたいとも考えていましたから、ある意味フリーランスになることは私にとって大きな一歩になりました。価値観や生き方と同じくらい、働き方にも多様性があってもいいはずですし、せっかく”やりたいこと”をきちんと持っている人たちが漠然とした不安を抱えて一歩踏み出せずにいるというのは非常にもったいないと思います。フリーランスになりたいけど食べていけるか心配だなとという不安を抱えているビジネスマンに対して、私が蓄積できた知識を直接共有することで一歩踏み出してもらえたらと考えています。そしてその踏み出した人と一緒に仕事がしたいですね。

-具体的にはどの様な”成果物のない”案件で生計を立てているのでしょうか。

黒田 新規事業のディスカッションの壁打ち相手や戦略立案といった頭脳労働への対価を頂くスタイルをとっています。カオスな状態を整理して形を与えていくという領域が自分の得意なところなので、これで食べていくしかないと思っていましたし、それが今形になっているのだと思います。案件自体は人伝が多く、セミナーも開いていますのでその中の1割がクライアント化するという具合です。

-完全に一人で入り込んで対応するスタイルなのでしょうか。

黒田 フリーランスと言っても、個人株式会社みたいな感覚なので、大体会社組織でやっていたこととあまり変化はないです。ですが、やはり仕事の質量となると一人でやる場合は大きく変化してくるので、例えば新規事業を担当する場合などは、デザイナーにモックデザイン、エンジニアに開発を依頼するなど、フリーランス同士でチームを組んで一緒に案件にあたるというスタイルがメインですね。

-情報の収集などはどうやっているのでしょうか。

最近はyentaなどを使って人に会ったり、パーティとかセミナーで会うというよりも1on1できちんと会話できる環境の中で情報交換することが多いです。自分自身、情報がストックされてきたこととこれまでのナレッジをもっと有効活用したいので、それをアウトバウンドではなくインバウンドメインでリード取得するための武器に使おうと考えています。具体的には、5月中旬から情報を音声でインプットできるpodcastでラジオ番組を始めています

身をもって出した実験結果で、背中を押したい

冒頭でも述べたが、フリーランスは特定の企業や団体、組織に属さず、自らの才覚や技能を提供することにより社会的に独立することを求められるが故に、自ら何かを生み出し価値を提供しなければ生きていけない。黒田氏は、「”今からフリーランスになろうとしているが、それについて大きな不安を抱いている”ビジネスマンに対して、私が実験体になることで得た知識を共有することで、背中を押したい。」と語る。

自分の本来求めている働き方を探している方、また、それに悩んでいる方は、黒田氏の身を削って導き出した”知識”に触れてみてはいかがだろうか。あなたが一歩を踏み出すためのヒントを与えてくれるはずだ。

参考リンク


Facebook Twitter このエントリーをはてなブックマークに追加