blue studio 大島氏が語る地域再生の鍵(前編)

blue studio 大島氏が語る地域再生の鍵(前編)

2016年5月13日
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なぜ今、椎名町なのか

BOOSTARの「椎名町の女将奮闘記*1」でおなじみ、江本さんが女将を務める「お宿・シーナと一平」。1階はミシンカフェ、2階は旅館という一風変わった作りのお店である。

*1椎名町の女将奮闘記はこちらから御覧ください。

都内に在住の方でも、椎名町のことをあまり知らない、もしくは初めて聞いたという人はかなり多いのではないだろうか。

今から遡ること60年ほど前、手塚治虫や赤塚不二夫、藤子不二雄、石ノ森章太郎などそうそうたる顔ぶれが、この椎名町にあるトキワ荘に住んでいた、と言えば少し興味を持ってもらえるかもしれないので付け加えておく。

なぜ今になって、この椎名町というあまり知られていない場所がフォーカスされたのだろうか。

「豊島区リノベーションまちづくり構想」の第一号事業化プロジェクトとして椎名町に生まれた「お宿・シーナと一平」。生まれる背景となったリノベーションスクールのユニットマスターとして企画時からプロジェクトを率い、現在も運営会社株式会社シーナタウンの一員として経営にまで関わるblue studioの大島氏に、その真意についてインタビューした。

リノベーションスクール、そして株式会社シーナタウンとは?

リノベーションスクールとは、まちの遊休空間を活用して地域活性化を図る事業を立案するワークショップのことである。

事業計画コースでは、所有者から提供された豊島区内の実際の空き物件を対象に、国内の先駆的なリノベーション事業者であるユニットマスター(講師)と、全国から集まる受講生が一丸となり、具体的なリノベーションの事業プランを3 日間かけて作成する。
最終日は、物件所有者に向けて公開プレゼンテーションを行い、スクール後は、提案内容をさらにブラッシュアップを重ね、実事業化につなげていく。このリノベーションスクールの参加メンバーを中心につくられた運営母体のまちづくり会社が「株式会社シーナタウン」である。

物件単体のみならず、その物件のあるエリアの価値を上げ、地域を生まれ変わらせることができるのかを真剣に考え、エリアの再生を目指すことを目的として開催している。また、セルフリノベーションコースでは、実際の物件を自分の手でリノベーションしながら技術を学ぶことができる。

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blue studioの1階にはキッチンがあり、社員の方々がここで昼食を作ることもあるそうだ。様々な種類のペンダントライトが吊るされている。

外の人の視点で見つける街の「お宝」から戦略が生まれる

−「お宿・シーナと一平」の事の始まりは何だったのでしょうか。

大島氏(以下、敬称略) この物件とは2015年3月に開催されたリノベーションスクール(*2)@豊島区からのおつきあいなのですが、事の始まりは、それに先立って区からの要請を受けて2014年冬にスクールの前哨戦として開催した「まちのトレジャーハンティング」というイベントでした。豊島区内の複数のエリアがターゲットとなったのですが、私のユニットの担当は椎名町エリアでした。」

−「トレジャーハンティング」とはどの様なイベントなのでしょうか?

大島 トレジャーハンティングとは、1チームあたり10人ほどの参加者たちが直径500mくらいの街中を歩いて「街中のかくれた宝物(空間や場や人の資源)」を見つけるイベントです。参加者には、そのエリアに住んでいる人ばかりではなく、初めてそのエリアに遠方から訪れた人も含まれます。また年齢層も幅広く、街の人が普段持ち得なかったフレッシュな視点やコミュニケーションから見いだされた「お宝」は地域再生のブレークスルーとなるかもしれない、という考え方に基づいて開催されるものです。

とはいえ、生真面目な活用方法を想定しながら物件を探すわけではなく、例えば探し出した宝物が商店の軒先ならば「○○商店の軒先とかけて○○ととく。その心は○○!」といったように大喜利的発想をもとに奇想天外な活用策とそれに対する納得でき、かつ明快なプレゼンを成果として笑の量を競い合うといったものです。まちをとことん面白がり、その面白さを伝える力をトレーニングするイベントなのです。

−なぜリノベーションスクールの前にそのイベントを挟んだのでしょうか?

大島 基本的に、いきなりスクールは開きません。通常人々はリノベーションとはリフォームのように建築的な行為という認識をもってしまいます。リノベーションとは建築的な行為ではなく、状況そのものの活用の仕方を考える事を意味しているのです。それをいきなりイメージすることは参加者だけでなく地域住人の方々にも難しい事なので、まずはリノベーションそのものを身近なものと感じてもらうことが大切です。実は地域の人が気づいていない『お宝』が見方を変えるだけでこんなにも沢山あるんだってことを、イベントを通して現地の人へ共有することで気づいてもらう。それが結果、市民が自らの力で街を変える『気づき』になるんですよね。

−椎名町の特性を理解し、把握するためには非常に重要なイベントですね。結果、どの様な特性を見つけることができたのでしょうか。

大島 池袋はリムジンバスの発着が非常に多く海外の観光客たちがfirst landingする場所、椎名町はそこから一駅で歩くことも出来ます。また海外の観光客を懐深く受け入れられる元気な商店街、という恵まれた環境があります。安価な宿泊施設として貸し出せる可能性のある古い空家も多く、そもそも外国人が多数働いているという土地柄もありますし、『海外とのリンク』はすでに特性としてある街です。

−確かに昔から漫画家含めアーティストの集う場所でしたし、そう言った性質の人を受け入れる懐の深さがある街という印象があります。

大島 その反面、課題も多くあるのですが、その一つが『街の呼び名』です。まず、街の呼び名を変えないといけないと思いました。

−街の呼び名をですか?その呼び名こそお宝な気もしますが…

大島 そうですよね、だからこそ親しんでもらうための呼び名を見直してみようということなんです。椎名町はローマ字で表記すると『Shi・i・na・ma・chi』ですが、海外の方たちにとってこのiが重なる言葉の発音は容易でありません。つまり、海外の方にとってこれだけポテンシャルの高い町でありながらその単純な「発音しにくい問題」から街の印象が根付かないのではないかという視点が浮上してきます。

そこで、『Shiina』という部分を『Sheena』に言い換え、『椎名町』を『Sheena Town』と呼んで海外の人々にプロモーションをかけるべし、という視点をトレジャーハンティングの時の一つの成果としてプレゼンテーションしました。『Sheena』で画像検索すると世界中の美女が画面に現れます、『シーナ』という呼び名は海外では英語圏を問わずポピュラーな女性の名前であり、特にヒロイン的なキャラクターによくつけられる名前であり、『椎名町』を『シーナタウン』と呼び名を変えるだけで街の名前が海外の人々にとって一気に身近な存在になる!というストーリーです。
『椎名町』という住所には出て来ない「まち」の名前であり駅の名前。これが活かし切れていない最大のこのエリアの宝物!というトレジャーハンティング的な解釈です。

−発音をかえるだけでまちの名前が宝物になるなんて気付きませんでした。他にも宝物はあったのでしょうか。

大島 近隣に日大の芸術学部があったり、漫画家のアジト「トキワ荘」もすぐそば、戦前戦中に芸術家たちが集った『池袋モンパルナス』もこの周辺でした。そんなアーティスティックな側面もこのエリアの宝でしょう。

それから高齢者も宝物!戦後から一貫して単身世帯の多い街で、現在は単身の高齢者が多く、子育てしにくいイメージがあります。しかし、山手通り沿道などにはファミリータイプのマンションが近年相次いで建ち始め、実はこのあたりで子育てしている世帯自体が少ないわけではないということも分かってきました。交流が無いだけだったのです。椎名町に古くから住む『お節介で世話焼き』なおじいちゃん・おばあちゃんたちが実は子育て世代にとっては宝物。お年寄りも子どももその親も気軽に集える場を商店街につくって、お互いに足りない部分を補いあえばいいんじゃないかと。

後編では特性を見極めつつ「つながる」をキーワードで具体的に生み出した効果について語りたいと思う。

blue studio 大島氏が語る地域再生の鍵(後編)へ続く)

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