アフロが失敗体験を経て帽子になった話

アフロが失敗体験を経て帽子になった話

2016年4月26日
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本企画の趣旨は?

まずはじめに。

本企画は、「Stepping Stone(踏み石、足掛かり)」という名の、失敗談 連載企画である。

筆者が独断と偏見を持って選出したフリーランス、起業家、活動家、はたまた企業で働くビジネスマンの方々に、「過去強烈に失敗したこと」をヒアリングし、その失敗談を赤裸々に掲載していくというものだ。アイキャッチを見て、アフロがどうやって帽子になるのか気になった人がいるかもしれないが、それは忘れて読み進めてほしい。

「失敗は成功のもと」、ということわざがある。英訳すると、「Every failure is a “stepping stone” to success.」となる。”Stepping Stone”という企画名はここに由来する。そして、この名には

1. ”失敗”=”成功の元”=”足掛かり”、を共有したい
2. まだ失敗であると本人が認識する前の話=”元”を探りたい

この2つの目的がある。

一体なぜそんな企画を今やるのかというと、シンプルに失敗は人類の財産であり、シェアされるべき知識と考えたからだ。この失敗談は、ふとみればそこらにある様な、とても親近感の湧く人間くさい話であり、偉大なる成功者が説く様なありがたい金言などではない。

例えば、落語は昔からの失敗談をまとめた失敗カタログであると言われることがあるが、本企画で公開していく失敗談も、その域の話である。生真面目にその失敗を嚙み砕き、ビジネスや課題解決のために活用しようという試みも勿論含んではいるが、この記事を見て「こんな大きな失敗をしても、なんとかなるもんだねえ」とか、「世の中には面白い人がいるなあ」、「私もこんな失敗したことあるなあ」、など笑い話を聞きに来てクスッとして帰るくらいのテンションでご覧頂けると幸いである。

朝5時の来訪者は招かれざる客だった

前置きはこのぐらいにしつつ、早速本題に入ろう。

本企画の一人目として名乗りをあげてくれたのは、今年で8期目に突入し「次代をリードする」という志を掲げるシステム開発会社Maple Systemsで代表を務める望月氏だ。

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今回は起業して間もなく直面した失敗について語ってくれた。

– 本企画の一人目ということで、パンチある失敗談に期待してます。よろしくお願いします。

望月氏(以下、敬称略)「個人的に今でもよく覚えてるのですが、創業して間もない時にブレードサーバー構築の相談がきて、当時自分もサーバー構築の経験がしたかったということもあって良い機会だなと思って受けたんです。」

– 案件的に経験も積めるし、お金ももらえるしで一見問題なさそうですね。

望月「案件的に気になる点といえば、これ、出会い系サイトのサーバー構築・保守の案件だったんですよね。当時出会い系と言えば不正に運営していたところとかが検挙されるとか物騒な話が多かった時期ということもあって少し迷うところもあったのですが、なかなかこういう案件に携わる機会もなかったし、何より経験が積めるってことが個人的には大きな理由だったので引き受けました。」

– 確かに、業界的には一抹の不安がよぎる案件ですね。

望月「他の仕事を受けながらでも自席でサーバー管理できるシステムを組んだり、一連の知見は習得することができました。漸く運用の地盤も作れて、問題なく進められてるなあと思っていたところで、案件を受けた時に抱いていた不安が現実のものになったのです。」

– 何が起きたんですか?

望月「朝5時に家のインターホンが鳴って、『なんだこんな朝早くに…誰だよ…』と思って玄関に行ってドア開けたら、警察官が5~6人立っていました。後で知ったのですが埼玉のサイバー警察の方々で。いきなり捜査令状読み上げられて、『家宅捜査させてもらいますね』と…。」

 

会社生命を救った10枚の紙

– 突然の来訪者としてはパンチがありすぎますね。自分なら過去の悪行がその場でフラッシュバックしそうです。

望月「パンチある話でしょう?(笑)良くテレビで見るような家宅捜査で使う押収用のダンボール箱も持ってきていたみたいですが、結局彼らが押収したのは10枚の紙でした。これが後々僕の、そして会社の命を救うことになるのです…。」

– 10枚の紙とは?

望月「契約書です。リスクを感じながら案件を受注したので、最低限ここだけはリスクヘッジしておかないといけないと思って、サイトの運営には一切手を触れない、ということ、つまりクライアントの業務内容については一切関与しませんよ、という内容を契約書に記しておいたのです。」

– 契約書の類は法的知識がないと作成にも時間がかかりますし、結構な手間だと思いますが、当時は弁護士などに相談されて契約書を作成されたのですか?

望月「全て自分で作りました。創業してまだ間もなかったからお金もなかったし、そういう危機管理は自分でやらないといけなかったので。しかし今思えば完璧にそれでリスクヘッジできていたかと言われれば、結果的にできていたというだけなので、かなりスレスレですよね。当たり前の話ですが、こういった法的な部分は専門の方を交えて作るというやり方をしなければいけないと思います。」

– 結果的にことなきを得たということですが、どの点が失敗ポイントだったのでしょうか。

望月「当初抱いていた不安が的中してしまうっていうのは、リスクが先に予見できていたのに回避できなかったということなので、やはりあの時経験が積めるからという理由で受けてしまったという判断は、失敗ですよね。目先の欲に目がくらんで選択をミスしてしまうというのは、人であれば良くあることなのかもしれませんが、これが原因で会社をたたまないといけなくなったり、さらに取り返しのつかないことが起きてしまう場合もあるわけなので、これは本当に良い教訓になりました。」

– 中々できない経験をしましたね(笑)そのあとはどうなったのですか?

望月「ドラマとかによく出てくる様な捜査車両の中で検察の人に取り調べを受けたあと、また3日間くらいガッチリ取り調べされました。色々と僕に質問してきた人のことを一番下っ端の人なんだろうなと勝手に思ってたんですが、実はこの方が検察のお偉いさんということを後で知って、『え…そうだったんだ…怖っ!』となったのを覚えています。ものすごく気さくで謙虚な方だったし、上の人は取り調べに出てくるなんてことないだろって勝手に思ってたんですよね。気さくなやつには気をつけろ、です(笑)」

– どうして上の人が出てきたんでしょうね。僕も本来取り調べする人って、言い方悪いですけど下っ端の仕事だろうなって、まさか上の人は出てこないでしょって思っちゃいます。

望月「この人相ですから、運営のボスだと思われたんですよ(笑)」

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– まあ、頷けるといえば頷ける話の様な…

望月「失礼な!(笑)僕、善良な市民ですよ。完全に向こうは首謀者だと思って捜査令状持ってきてるわけですから、5~6人で来るっていう意気込みもわかります。それから一ヶ月間ほど自宅を張り込みされていたっていうのもまぎれもない『疑い』が僕にかかってたからです。」

– その疑いはいつ晴れたんですか?

望月「検察で取り調べを受けていた時に、『仕事があるから仕事しながらになるけど、いいですか?』とことわりを入れて、仕事しつつ取り調べを受けたわけなんですが、その時ヒアリングされた内容とかはもう一字一句逃さず調書に書かれていて、それも『怖っ!』と思いましたね。結果、僕を取り調べしていたその『上の方』が『この人強面だけど真面目な人だと思うし嘘は言ってないよ、首謀者ではないね』と言ってくれて起訴を取り下げてもらえたので、晴れて潔白の身になれました。」

– 拘束される時間もできてしまったし、仕事にも影響あるしってことで余計なコストも出てしまいましたね。

望月「そうですね、身から出たサビですけど、本当あの時きちんと仕事をする相手や業界を欲にとらわれずに見定めていれば、特にこんな余計なコストは生まずに経験できていたかもしれないですし、今ではその失敗経験から仕事相手は本当に自分が仕事したい相手なのか、業界的に違和感はないか、という点はすごく気をつける様になりました。」

数々の失敗を受け入れ、次代を見据えるスタンス

紙10枚で救われたその命は着々と育まれ、現在8期目を迎える望月氏の会社は「楽しみながら次の世代=次代をリードする」ことを心がけているそうだが、前述した警察沙汰以外にも数々の失敗をしてきており、その度に失敗を受け入れ、めげずにコツコツと歩を進めている。

フェーズとして、社長含め社員がナイーブになってしまう時期や転換期と言われるカロリー消費の高い時期も「受け入れ、逃げずに歩み続ける」、というスタンスで未来を開拓してきた望月氏にとって、この「次代をリードする」というフレーズには特別な思い入れがあるのだろう。

インタビュー中、坊主頭をかきながら不敵な笑みを浮かべる望月氏の心の中には、大きな失敗をして失いかけた会社生命だからこそ、それを心底大切にする気持ちが根付いている、という芯の様なものが伝わってきた。上場、出産・育児のためにリモートワークできる環境作りやワークツール開発、自社サービスを作るための組織作りなどの目標を語りつつ、「今セブ島にオフィスをOpenして、Airbnbライクにエンジニア限定で貸し出したりしてるんですよ」と楽しそうに話していた望月氏。

Maple Systemsはこれからも訪れるだろう多くの失敗に怖がることなく、常に前を向いて歩を進めるのだろう。

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