発達障がいの子をもつ母である映画監督が手掛けるドキュメンタリー「ちがってていいよね?」

発達障がいの子をもつ母である映画監督が手掛けるドキュメンタリー「ちがってていいよね?」

2016年2月8日
Facebook Twitter このエントリーをはてなブックマークに追加

ここ数年、日本でも日常的に目にするようになった「発達障がい」という言葉。自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、チック障害などが含まれ、コミュニケーションはじめ社会生活に困難を感じる人も多い。病気ではなく、生まれつき脳の一部の機能に特異な部分がある「脳の特性」とされ、その症状の現れ方は個人差が大きいといわれている。

最近では発達障がいの早期発見や療育への取り組みも徐々に進み、また、芸術や企業経営の分野で突出した才能を発揮する著名人の中にも発達障がいとされる人が少なからずいるといった報道もあり、発達障がい自体の認知度は高まっている。ともあれ、家族、職場の仲間、そして自分自身が発達障がいだとわかったら。やはり戸惑い、動揺するのではないだろうか。

名古屋を拠点に地域プロデューサーとして活動する石丸みどりさん。一般社団法人ものがたりラボを主宰し、地域を活性化する映画制作や地域のプランディングデザイン、デザイン教育を手掛ける石丸さんが、次男に軽度発達障がいがあるとわかったときは「将来が真っ暗に思えた」そうだ。ちょうどその頃、石丸さんは地域活性のための映画制作に携わり、息子さんが作品に出演。息子さんはこれをきっかけに演劇にはまっていったのだという。

演劇にのめり込む次男を通じて、石丸さんは発達障がいのある人と演劇は実は親和性が高いということを知る 。例えば自閉症スペクトラムの人は、「ごっこ遊び」が苦手なことが多い。自分の世界をもち空想力はありながらも、相手とのやり取りで臨機応変に役割やセリフが変化する「ごっこ遊び」はうまく楽しめないのだという。このように、コミュニケーションが苦手で突発的なことにうまく対処できなかったり、緊張して身体や表情が固くなったりすることもある発達障がいの人にとって、予めストーリーがや役割、自分のセリフが決まっている演劇は、取り組みやすいようだ。大きな声を出しながら体を自由に動かすことができ、さらに練習を積み重ね、本番では拍手や称賛の声も得られる演劇は、達成感と自信が得られる格好の機会だったのだ。

こうした経緯から、石丸さんは、2015年7月23日に名古屋市瑞穂文化小劇場で上演された「朗読劇 微笑みをあなたに」への参加を発達障がいのある人たちに呼びかける。プロの舞台人や一般の参加者に交じって、発達障がいをもつ7名のメンバーが参加し、約3カ月間の稽古に参加、本番を迎えることとなった。

さらに石丸さんは、この稽古の様子に密着して撮影、ドキュメンタリー映画を作ることを思い立った。参加者の1人である23歳の女性を主軸に、稽古日以外の普段の生活、家族の想い、支援者の気持ちなども取材。本人とお母さんへの取材では、発達障がいがわかった時の当惑、周囲の対応、人間関係の難しさなど、石丸さん自身も涙が出る思いで共感し、同時に、同じ思いを抱き悩む全国の人に思いを馳せたという。

こうして生まれたドキュメンタリー映画が「ちがってていいよね?」だ。石丸さんがこの作品を通じて伝えたいのは「違いは個々の特性であり、誰にでもある個性のひとつ。知らないから行き違いも生まれるけれど、知ることでお互い分かり合えるし助け合える」ということ。映画のタイトルを「みんなちがってる」にしなかったのは、「ちがってていいよね?」とまだ周囲に対して恐る恐る聞かなくてはいけないのが現実なのだ、という思いもこめている。

石丸さんは、この作品を1人でも多くの人に観てもらえるよう、クラウドファンディングで応援者を募った。2015年10月2日に終了したこのプロジェクトで集まった資金は、映画の編集や上映会の開催経費に充てられている。そして2月から、いよいよ名古屋でドキュメンタリー「ちがってていいよね?」の上映が始まるという。互いの個性を認め合い、力を出し合う社会は、発達障がいをもつか否かを抜きにして、全ての人が生きやすい社会ではないだろうか。そんな思いのもとに、石丸さんの活動を応援し、「ちがってていいよね?」と自分や周囲にも問いかけていきたい。

Facebook Twitter このエントリーをはてなブックマークに追加