一億総活躍時代。だったら、おばあちゃんも輝かなくちゃ。

一億総活躍時代。だったら、おばあちゃんも輝かなくちゃ。

2016年1月14日
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厚生労働者が発表した2014年のデータによると、日本人女性の平均寿命は、86.83歳。健康上の問題で日常生活が制限されない期間を示す「健康寿命」も試算されていて、こちらは2013年のデータで、女性74.21歳。ちなみに男性は、平均寿命が80.50歳、健康寿命が71.19歳となっている。また、総務省統計局によれば、2015年9月15日時点の推計で65歳以上の高齢者人口は3384万人。総人口に占める割合は26.7%で、前年(3295万人、25.9%)と比べると、89万人、0.8ポイント増と大きく増加していて、高齢者人口は数、割合ともに過去最高。さらに2040年には、36.1%になると見込まれている(出典:「人口推計」総務省統計局)。

一億総活躍時代なんていうかけ声も聞こえるけれど、「一億」の4分の1以上を占めるのは高齢者だ。「活躍」にもいろいろあるけれど、シニア女性には華麗なファッションに身を包んで、颯爽と街に出てもらうのも、一つかもしれない。

人は誰でも「社会とのつながり」が必要

兵庫県西宮市にある有限会社トリニティは、車椅子・介護用品を扱う「TCマート」を展開している。代表の添田修次氏は約30年間のアパレル業界での仕事を経て、1999年に医療機器・福祉用具のレンタル販売の会社として今の会社を立ち上げた。専務の添田優作氏は、忙しく働く両親の背中を見て育ち、同時に、同居していたおばあちゃんにかわいがられた「おばあちゃん子」だったという。幼い頃から、漠然と「将来はおじいちゃん、おばあちゃんが喜ぶ仕事がしたい」という思いを抱いていたという優作氏。現在の車椅子や介護用品を扱う仕事も天職なのかもしれない。

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そんな優作氏がこの仕事をはじめて10数年。多くの高齢者と接するうちに感じたのが、元気にいきいきと過ごす人と、元気がなくしょんぼりとした印象の人の違いだったという。優作氏が感じたその違いとは、「社会とのつながり」があるかどうか。友人がいたり趣味があったりで、何かしら社会とのつながりをもち、外に出かけていく人は、元気ではつらつとしている。かたや、誰かと話したり外出の機会がなかったりという人は、元気がなくなってしまう。

このことに思い当たってから、お年寄りが「お出かけしたい」「誰かと会いたい」と思うきっかけを作りたいと考え続けた優作氏が思い付いたのが、「出かけたくなる洋服」を作ることだった。

「着られる服」ではなく「着てみたい服」を

奇しくも書店で、ニューヨークのお洒落なお年寄りのストリートスナップばかりを集めた写真集「Advanced Style-ニューヨークで見つけた上級者のおしゃれスナップ」に出会った優作氏は、「なぜ日本のお年寄り向けの服は地味で暗いものが多いのだろう。こうした洋服にみんな満足しているのだろうか」という疑問を抱く。確かに、おじいちゃん・おばあちゃんが着ている服というと、グレーやベージュ、薄紫色の、ファッション性よりは着心地重視なものが浮かんでくる。若い頃は、似合う色、流行のデザイン、自分なりのスタイルでファッションを楽しんでいたはずなのに、一体どのタイミングで、人はお洒落の楽しさを手放してしまうのだろう。お年寄りに、お洒落をする楽しさを思い出してもらって、お出かけするきっかけを作りたい。そのために、「着られる服」ではなく「着てみたい服」を作りたいと優作氏は考えるようになり、手始めに女性用の洋服づくりに着手した。

シニア世代向け商品のモニター展示会や介護施設、時には街角に出向き、「おばあちゃんの服」「おばあちゃんのファッション」についてのインタビューを繰り返すうちに、「お洒落には人を元気にする力がある」ということを優作氏は確信。実際、おばあちゃんたちに、普段は着ないような明るく華やかな服を着てもらったところ、一瞬で表情が変わり、素敵な表情で写真撮影に応じてくれたそうだ。確かな手応えを感じて、優作氏は「おばあちゃんが本当に着たくなる洋服を作る」ことを決心する。

COCOWAKU(ココわく)ブランドの誕生

シニア世代、特に70代以上のファッションの妨げになる要因の一つが、体型の変化だ。背中が丸くなり身長が縮む、バストが下がり下腹部が出てくる、腰や膝が曲がる。腕や肩など関節の痛みが出る場合もある。こうなると、お洒落な服よりも、着やすい服を選ばざるをえなくなり、大きめのサイズを買うことになる。さらに、シニア向けのファッショナブルな服を扱う店も多くない。

こうした背景も踏まえ、優作氏はいまだ市場にないシニア女性向けの服作りに挑んだ。こうして誕生したのが、「COCOWAKU(ココわく)ブランド」である。ブランド名には「ココロわくわく」の思いを込めた。年齢にふさわしい 上質な衣服を身に付けながら、若かりし頃のドキドキやわくわくを取り戻してほしい。機能的なだけではなく、着るだけで洗練された女性を演出してくれる、外に出掛けたくなるようなおしゃれ着、がブランドのコンセプトとなっている。

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実際の商品開発にあたり、優作氏は70代女性の体型データをもとにオリジナルのトルソーを作成。既成品には、70代以上の体型に合うものがなかったという。市販の細めのトルソーを肉付けして手作業で理想のボディを作成、さらにユニバーサルデザインを採用し、木姿の美しさと同時に着替えやすさも追求した。

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こうして生まれたのが、主力商品である「ココわくブラウス」。キリリと美しい白色で、従来のおばあちゃん向け衣類のイメージを覆す凛とした佇まいである。ボタンを掛けやすく、腕や背中も楽で動きやすいように、細やかな工夫がなされている。さらに、ブラウスの装いを一層華やかにしてくれるスカーフも作り、「お洒落してお出かけしたくなる」ラインナップとした。

贈りたい服は、いつか着たい服

先ごろ優作氏は、クラウドファンディングにチャレンジし目標額を達成している。資金調達の目的は、新商品の開発と、日本の縫製工場に継続発注するための体制作りだ。COCOWAKUのブラウスとスカーフは、母やおばあちゃんに贈りたい服であると同時に、現在45歳の筆者もいずれ着てみたいと思う一着。今後新しいデザインやアイテムが増えたら、年齢を重ねてもファッションを楽しめる。そう思うと、いろいろ不安も多い高齢化社会だけど、ほんの少し明るさが見えてくる。若い人が憧れるようなスタイリッシュなおばあちゃんを目指して、これからもオンナ心を磨いていきたいものである。

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