きみがカレー好きならば、カイラスのカツカレーは食べたことがあるか

きみがカレー好きならば、カイラスのカツカレーは食べたことがあるか

2015年12月1日
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道玄坂を登って、ちょうど中腹辺りに構える交番のある交差点を左折したときの、あのカレーのにおいをかいだことがある人はどれくらいいるだろう。曲がってちょっと歩くとすぐに、あっ今日はどこかのおうちがカレーなんだな、というにおいがしてきて実家の住宅街のことを思い出す。

そのお店のことはずっと気になっていたけれど、なかなか入ることができなかった。お店がやっているときはカレーの気分ではなかったり、食べたいときにはお店が閉まっていることが多かった。でも今日はカレーが食べたい気分だったし、お店も絶好調開店中だった。両者の思惑が完全に合致したのだ。本当においしかったし、これから下の文章なんて読まずに、とりあえずお店に行って欲しい。ということで本文の前に店舗情報を載せておく。ぼくが食べたのはカツカレーで、ぼくより後に入ってきたひとも全員カツカレーだったから、その注文がおそらく正解なのだろう。

店名 カリー カイラス
所在地 東京都渋谷区道玄坂1-19-1 渋谷道玄坂商店街振興組合ビル 1F
営業 月~金 11:30~16:00
17:00~19:00
11:30~14:00
定休 日曜・祝日

 

正確にはお店に入る前からだが、お店に入るとカレーのいいにおいが立ち込めた。と同時にぱちゅぱちゅぱちゅという油の弾ける小気味良い音が聞こえてくる。店内は細長いつくりになっていて、「L」を上に180°回転させた形で、全席カウンターになっている。14時すぎだというのに店内はほぼ満席で、活気とスパイスのにおいに満ち溢れていた。壁とカレーに夢中で丸まった背中の間を、体を横にしながら滑りこませ、1番右奥の席に着いた。

席につくとすぐシェフが紙ナプキンで細長くくるまれたスプーンとお冷を出してくれた。カレー屋さんを食べ歩いた経験は多くはないが、老舗でおいしいカレー屋さんはこのパターンが多い気がする。脳ある鷹がその爪を剥き出しにはしていないように、お前もおいしくカレーを食べたいなら、食べるその瞬間までエモノ(スプーン)は見せびらかさず隠しておくんだなとか、そんなメッセージなのだろうか。

メニューはビーフカレー、チキンカレー、ポークカレー、カツカレー、ヤサイカレーだったと記憶している。ヤサイカレーは甘口で、それ以外は中辛がデフォルト。甘くできるかはわからないが、辛くすることはできそうだった。男子なら、カツカレー以外の選択肢があるのだろうか。迷わずカツカレーを注文し、その選択は今でもベストだったと信じている。

少し話は先に飛ぶが、お店を出た後すぐ、知人にあった。カイラスを知っているか、と尋ねたところ、「やっぱりなー!カレーのにおい超したもん!」と体中からわたしカレー食べましたよーというオーラ出しまくりだったようで、彼はオーラがあまり出ないように決まって持ち帰りにするようだ。そして彼はこちらも決まってポークカレーにカツをトッピングするそうだ。カイラスに行くまではぼくもそれがベストだと思っていたし、ビーフカレーにカツをトッピングすることこそ至高だと信じて疑っていなかった。しかし、カレーとカツのレベルが高いのであれば、カレーの具は入っていなくてもいいのではということに思い至った。カツとカレーの具をバランスよく減らすことに苦心するくらいであれば、あえてシンプルにカツだけという選択も大いにありだと。Less is More。イチロー選手はホームランも量産できるバッターだが、ヒッティングもバッティングも両者を取るのではなく、ホームランをあえて捨てることで世界一のヒッティングマシーンになった。カレーの具をあえて捨て去ることでしか得られない感動があるはずだ。

注文してから5分ちょっとほどだろうか。銀の食器に盛りつけられたぼくのカツカレーが出てきた。一目惚れのように、出会った瞬間おいしいだろうと確信したが、信じられないことに中サイズのカツが4個、カレーとご飯の間を隔てるように盛られていた。いままで出会ってきたやつはどれも、一枚のカツを7~8カットに分けて盛られているものばかりだった。ぼくはもちろんそうだし、おそらくあなたたちも同じはずだ。一枚のカツをカットして提供する場合、結局衣はどこかに行ってしまうしことが多いし、そうなると最後までサクサクの食感とカレーを一緒に楽しむことができない。ただ、中サイズのカツを複数個に分けて提供することで、肉と衣は最後までマリアージュし続け、さらに出会いたてのあの頃のように新鮮に、サクサクの食感のままカレーと一緒に楽しむことができるのだ。

ぼくはカレーも大好きだが、それと同じくらい福神漬も愛している。カレーを食べるとは福神漬を食べると同義だと信じている。カイラスでは、テーブルにらっきょう、福神漬、きゅうりの塩漬け的な奴、白菜の浅漬的な奴が常備されていて、乗せ放題だ。福神漬以外は試していないのでわからないが、ぼくの好きな黒茶っぽいやつで非常に好印象だった。真っ赤な福神漬がたまにあるが、あれはあんまりよくないと思う。黒茶っぽいやつこそ真にカレーに合う福神漬だし、桃屋の福神漬なんかはカレー1.5杯くらいでひと瓶使い切るほど好きだ。あれは超うまい。

最高のカレー体験ができることは間違いないが、ひとつ不満を言うとしたら、お冷のボトルと紙ナプキンが設置されていないことだろう。ぼくは辛いものを食べるとすぐ汗をかいてしまうし、水とかもたくさん飲みたい。おそらく添え物を配置するとそれらをいい感じに置けなくなるため用意していないのだろう。ただ、満席の状態にもかかわらずぼくの水がなくなると、お姉さんがベストなタイミングで注ぎ足してくれた。細部にまで注意が行き届いたサービスだと感服の極みだったし、辛さもちょうど良く、汗はほとんど出なかった。辛いカレーが苦手な人でもおいしく食べられる味になっていると思う。

感動のあまり、さっき食べて勢いで書いたが、みなさんもこの勢いのまま一度行ってみてはいかがだろうか。ぼくは放ったらかしにしていた他の仕事を、このままの勢いで始めようと思う。

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