ドキュメンタリー映画の可能性を追求する活動家「里田剛」が語る、「リアリティと共感」の先にあるものとは?

ドキュメンタリー映画の可能性を追求する活動家「里田剛」が語る、「リアリティと共感」の先にあるものとは?

2015年6月19日
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「世の中には、人の数だけ物語が存在しています。ハリウッドで映像化されなくても、作品として放映されなくても、書籍には書かれてしなくても、世の中に流通していない良い物語が世界には相当数存在してますが、そのほとんどは人に語り継がれることもなく、自然に消えてなくなってしまうのです。その中にも実はとても良質で生々しい物語があります。それを僕は映像化したい、そして、それを映像化しようとしている人達の背中を押したいのです。」と里田氏は語る。

今回インタビューさせて貰ったのは、映像制作会社MEDIAFORYOUを経営しながら、ドキュメンタリームービー制作をしたいという意思を持つ若年層をBOOSTしている、里田剛、という人物だ。

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本題に入る前に、里田剛という人物のことをもう少し知って頂きたいので、下記にプロフィールを記しておく。

会社概要 | 映像制作のメディアフォーユー株式会社 より抜粋・引用

1970年奈良県橿原市生まれ。 関西大学経済学部卒業後、テレビ番組制作会社に入社。
テレビ東京「開運なんでも鑑定団」など20番組でディレクターを勤めた後、TBS「サンデー・ジャポン」でサンジャポフリージャーナリストとして活躍。だが、視聴率競争のための番組作りに限界を感じ、独立。

2006年、メディアフォーユー株式会社を設立。 以来、9年間で600社を超える企業映像を制作。

2010年、ITVA-日本コンテストで金賞を受賞。

2012年、映文連アワードで企画奨励賞を受賞。

更に、ナンパに明け暮れていた医大生がカンボジアに小学校と病院を建てるまでの3年間を追ったドキュメンタリー映画を自主制作。その映画「マジでガチなボランティア」が、ハリウッドの映画祭、LA Eiga Festで長編映画部門グランプリを受賞。テレビ、映画で培った制作力に、自身の中小企業経営者の視点を加え、伝わっていない、理解されていないことの多い、中小企業の仕事の魅力を広めている。

「リアリティと共感」を突き詰めていったその先で変化した、「本当にやりたいこと」

里田氏の会社が手がける作品の中で、最も多いものは「採用動画」だ。

「どのような映像であれば、視聴者である学生にとって有意義なのか?」「どのような映像であれば、企業が抱える問題を解決できるのか?」と考えていった結果、 「リアリティ」のある映像で「共感」を描くことができれば、学生と企業両者共に最も有意義なのではないか、という理論のもと、ひとつひとつの作品に愛情を込めて丁寧に作り上げてきた。

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※ 里田さんの映像に懸ける気概は、「映像制作会社の作り方」というブログを見ていただければより知ることができる。

それを続ける中で、映像制作をしている若者達と人づてで知り合ったり、Web上で興味を持った人に積極的に連絡を取り、その人達の作品を見せてもらう機会を増やしていった。100あるうち99は面白くないという辛口批評ではあったが、その唯一残った1つの作品を作った人を里田氏が直接的に指導する、という活動を始めたのだ。

そんな中、つい2,3ヶ月前に突如として「やりたいこと」に変化が起きたそうだ。

−突然「やりたいこと」が変わったキッカケは何だったのでしょうか?

里田氏(以下、敬称略) 今までは自分が全てやらなきゃ気が済まなかったのですが、最近は他の人に任せることが増えています。あがってきた映像作品を見たときに、ほとんどがダメなのですが、稀に自分が作るよりはるかにいいものを作るなあ、と感じられることがあります。そんな体験を積み重ねていくうちに、まるで脱皮したかの様に自分の中の「やりたいこと」が変わりました。これまでは自分で自分の想像を超えるものを作ろうとしていたのですが、他人が自分の想像を超えたものを作るのを見るほうが、「面白い!!」と、思うようになりました。そこで映像制作をしている若者を指導するのではなく、制作のサポート活動をする様になりました。

ドキュメンタリー映画が持つ、大きな可能性

−映像制作のサポート活動について、より具体的にお聞きしたいのですが、里田さんが託した若者が制作している作品は何か一貫した特色の様なものはあるのでしょうか?

里田 「まだ世の中に流通していない物語を映像化したい」という思いがこの活動の源です。生きていれば何かしらの物語がありますが、それらは自分の心の中だったり、身内の間だけだったり、仲間との間でしばらく大切にされた後、自然に消えていってしまうものがほとんどです。しかし、そういった物語の中にも、それを必要としている人がいます。その物語の主人公が有名か有名でないかとか、普遍性が高いとか低いとかはあまり関係がありません。求められているのは、リアリティです。情報が溢れかえる現代において、希少なものの一つだと思います。そんな世の中に埋もれているリアルな物語を提供していきたい、と昔から考えていました。そして、そのような物語をどういった手法で映像として広めていくべきかを考えたとき、お役所の許認可もスポンサーの意向も関係ない映画、とりわけ劇場以外でも様々な見られ方をしてきた「ドキュメンタリー映画」というものにたどり着きました。

−ドキュメンタリー映画を作る上で、里田さんはディレクションのサポートもおこなっているのでしょうか?

里田 僕はものすごく口を出します。でもそれはあくまでアドバイスであって、決めるのは監督です。世の中に埋もれているいろんなリアルな物語を提供していきたいので、たくさんの作り手と出会いたいと思っています。そのために必要なことは、作るための環境です。それを提供したい、と考えています。ちなみに、監督に求めることは、「この人はなぜこれをやるんだろう?」、ということが明確か過剰なことですね。映画を作るのは旅です。思い描いていた場所にたどり着くのも、全く別のところにたどり着くのも自由。そんなことが許されしまうのがドキュメンタリー映画の面白さでもあり、難しさでもあります。

−では、共にドキュメンタリー映画を制作する上で、大切にしていることや軸としていることを教えてください。

里田 「映像を作る人」を選ぶときもそうですし、「映像を作るときの被写体」を選ぶときもそうなのですが、予算がどう・時間がどうとか、そういったことに関係なく熱をいれられるようなことを実際にやっている人を見つけること、ですね。若者に託して映像制作のサポートをするという活動をしたいと思う前、僕自身もドキュメンタリー映画の制作をしていたのですが、「マジでガチなボランティア」という作品を制作したのも、2007年2月くらいに石松宏章という一人の若者が、まさにそういう「熱をいれられるようなこと」を持っている人物に出会ったというキッカケがあったからでした。出会った頃は、丁度、石松くんが「カンボジアに病院を建てたい!」というボランティアを始めた頃だったのですが、彼はそれを実現するために、GRAPHISというイベントサークルをやっていました。この学生団体を自分が卒業しても永続的に支援が引き継がれていく組織に進化させようとしていた時期でもありましたね。当時、彼は医学生だったのですが、「医学生で金髪、見た目も全体的にチャラい」となったら、人を見かけで判断してはいけないのでしょうけど余計に「この人はなぜこれをやるんだろう?」と思いますよね(笑。その理由を探る意味でも、彼の活動を2007年から3年間に渡って密着しました。

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出展:スペシャル|ドキュメンタリー映画「マジでガチなボランティア」公式サイト

−ご自身で映像制作をしたり、映像制作サポートの活動を通して里田さんが「実現したかったこと」を教えてください。

里田 今まで僕は様々な企業の採用動画・リクルートビデオを制作してきました。それが僕の柱になっています。でも、僕が作った動画のほとんどは、会社のパーティ会場であったり、人事部の方々や、就活をしている学生など、限定的な領域でしか見てもらえないものでした。制作した動画に対して良い感想を頂いたり等、そういったことがとても喜ばしくありがたいと思う反面、「こんなに頑張って作った僕の動画は50人くらいしか喜ばせられないのか」、と正直落胆したこともありました。そして、それを感じる度に、「大人数の人に僕の作った動画を見てもらいたい」という気持ちが明確になっていったのです。より具体的に言えば、多くの人に見せることが目的ではなく、「まずベースとして良い物語があった上でそれを多くの人に見てもらいたい」と思ったのです。これが、僕が映像制作を通して本当に実現したかったことです。

情報発信するための「地力」を上げていくことがミッション

−今後の活動において、ミッションや未来に思い描くイメージを教えてください。

里田 今後は、この活動の幅をより広げていく上で、仲間を集めるために自ら情報発信していく必要があると感じています。イベント、Webからの呼びかけであったり、アナリティクスを導入しどうすれば同じ意思を持つ人を集めるかを解析したり、クラウドファンディングの仕様を理解し、その活用法をマスターするなど、情報拡散と人を集めることに特化した「地力」をつけていくことがミッションです。僕自身、「お金稼ぎの方法なんてたくさん知ってるし、稼ごうと思えば稼げるのに、あえてお金にならないことを一生懸命やっている人」が好きで、ピュアに「これがやりたい」と思ってやっている人よりもこういうちょっとした「揺れ」を持っている人と出会いたいですね。あえて正攻法ではないやり方で実現させたいと思っている人は、つまりハードルを越えようとしている人だと思うので。そういった人達が実現までの道のりを集中して歩ける様な環境であったり、仕組みを作ってこの先も背中を押し続けたいと思っています。


その日、その時、その場所でイレギュラーに起こる事実の全てを隠すことなくさらけ出すドキュメンタリー映画。

そこには普段自分達が体験していることと同じ「生々しさ」=「リアルさ」がある。「ドキュメンタリー映画を撮りたい!」と心底思っている人達の背中が押されることで活動の場が増加すれば、世に流通していない物語が映像化される機会が比例して増えていくだろう。

これからの時代において、「名もなき良質な物語」は自分達のすぐそばですでに多く存在しているという事実を、より近くに感じられる様になるという可能性もおおいにあるのではないだろうか。それと同時に、その先で「良き物語」が誰かの背中を押すであろう可能性もおおいに秘めているのではないだろうか。

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