「当たり前ではないことを当たり前にしていく」がコンセプトの新投資モデルとは?

「当たり前ではないことを当たり前にしていく」がコンセプトの新投資モデルとは?

2015年6月12日
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投資には、“不確実性”が必ず伴う。

そのリスクを背負う価値があるかどうかを見定めるため、事業計画書の濃さや資本生産能力の高さを過去の実例から推しはかり、できる限りその不確実性を引き下げてから投資を行う、というフローが通説だ。投資家の立場にたって考えてみると、「既存のビジネスモデルで成功しているものに対して投資を行うこと」、がリスクヘッジになるが、全く新しい形のビジネスは儲かるか・儲からないかが当然不透明なため、ここに対して積極的に投資を行う投資家は少ないだろう。

“日本はベンチャー企業への投資活動が出遅れている”

日本は欧米に比べてベンチャー企業への投資活動・スピードがかなり出遅れている。

「日本はベンチャーを育てるには非常に悪い環境にある。まさに『出るくいは打たれる』の典型だ。米にはベンチャーキャピタルなど、出るくいを見つけて育てていこうという環境が根付いている。起業家を見つけては資金を出しましょうと言うことが当たり前のように行われている。企業が利益をあげたらもうけようという欲と二人連れだが、出るくいを育成する風潮が強い」

「日本でベンチャー企業が育たないもうひとつの理由は嫉妬心だ。若い起業家が成功し、上場すると、問題点を見つけ、足を引っ張る傾向が日本には強くあるような気がする。やっかみが渦巻いている。日本はもともと平等意識が強かったこともあるのか、突出したものを好まない傾向が強い」

よみがえるか日本の電機 いでよ信念の経営者 稲盛和夫氏に聞く  :日本経済新聞 より抜粋・引用

 

上記の様に、京セラ・第二電電(現KDDI)の稲盛和夫氏が3年も前から日本の投資体質について苦言を呈しているが、未だ投資活動が伸び悩んでいるその理由の中には、日本独自の国民性であったり、そもそもの国内で行われている投資文化自体の発達スピードが遅いなど根深い問題が様々存在している。

しかしその反面、ベンチャーキャピタルや個人投資家だけでなく、「投資」という言葉そのものの意味合いを拡張し、これから新たにでてくるサービスやビジネスモデルに対して、会社をあげて「新たな投資」をしようとするアクションも増えてきているのだ。

今回インタビューをさせて貰った株式会社ソフトフロントの小濱氏は、「新たな投資」を実践し、新たなサービス・ビジネスモデルを作る起業家達を、「技術力」でBOOSTしている人物だ。

バージョン 2

 

“当たり前ではないことを、当たり前にしていく”

−小濱さんが会社をあげて投資事業を行っていく上でのコンセプトを教えてください。

小濱氏(以下、敬称略) 僕達がまず掲げたコンセプトは「当たり前ではないことを当たり前にしていく」です。ひとつの芯となる部分、つまりコンセプトを作る作業と、実際に投資モデルを作っていく作業は、並行して行っていたので、明確なコンセプトとしてこれを掲げられたタイミングは、アクションし始めてからでしたね。

−具体的には、コンセプトを形成していく上でどの様なことを考えていたのでしょうか?

小濱 日本の経済事情を考えた時、貿易黒字の時代は終わりを告げ、人口が減少するという事実を受け止めながら、次なるモデルを探している様相があります。でもちょっと待てよ、と。本当は他にも経済状況を前向きに進展させるやり方がもっと沢山あるのではないか?と問題提起したことがこのコンセプトを立てるキッカケとなりました。日本発の新しいビジネスの背中を積極的に押し、新たな本流が生まれることで、経済効果を上げるフレッシュな方法を思いついたり、といった様な連鎖がこの国には必要ではないか?と考えた時、当たり前ではないことを当たり前にするために僕達が協力できるエリアはどこになるのだろう?と自問自答しました。

−新たな投資の形を作る上で、小濱さん(ソフトフロントさん)が起業家に対してできる協力は、自問自答の結果すぐに具体化したのでしょうか?

小濱 僕達は自分達のスキル、つまりできることについて深く理解し把握しています。やはり、背中を押す上で一番武器として活用してもらえるのは「技術力」だと当時から思っていたので、あとはその技術力をどういったタイプの起業家に対して提供できるか、ということを考えなければなりませんでした。昨今、技術者ではなく、経営コンサルティング出身の方やデザイナー出身の方が起業されることが多くなってきたこともあり、実現したいアイデアがあってもそれを具体的な形にして世に出すことができずに困っている人達が多く存在し始めているということ、つまり、「技術がなくて困っている」、という起業家が想像以上に多く存在していたのです。また、起業家が技術者であったとしても、リソースが限られており、サービスを構築することには時間が必要でした。そこに対して僕達は技術というアセットを使って背中押ししたい、と考えました。つまり、「技術(を)投資(すること)」を始めたのです。

“会って15分で投資をしたいと思ったサービスとは?”

−現時点では、何社に技術投資を行っているのでしょうか?

小濱 2014年4月からこの活動を始めていますが、今の所2社です。その中の1社は既にサービス自体は走っていたのですが、今後サービスの機能を拡張していく上で、開発のところに様々な課題を抱えている会社でした。サービスの概要を聞いてみると、実現させようとしているビジネスモデルや未来絵図に関しても考え方が非常に面白いなと感じて、話を聞いて15分で「ここに技術投資したい!」と思いました。

−出会って15分で投資をしたいと思った程の面白さ…すごいですね。今お話にでた投資先の企業について、詳しく教えてください。

小濱 その企業の名前は「株式会社ワールドスケープ」といいます。まずこの企業の成り立ちも面白いのですが、この会社をやっている代表の海保さんと、取締役の齊藤さん、長田さんはSONALIOというバンドを一緒にやっており、「リスナーとアーティストがリレーションを持てるプラットフォーム」を作りたいという思いから起業をし、Frekul(フリクル)というサービスを作ったのです。サービスの概要を簡単に言うと、「アーティストの楽曲をアップして、登録するとリスナーが曲をダウンロードできる、月額制のサービス」です。話を聞いた当時、既に2,000組のインディーズバンドが登録をしており、JASRACに抵触しない範囲で楽曲配信、ライブイベントに行ける特典配布などを行っていました。リスナーとアーティストをWeb上でフィジカルにつなぎたいという発想自体は、彼らが音楽シーンで活動する1バンドであることから生まれたものですし、その頃市場に出回っていた無料配信を行っている音楽アプリとは明らかに違う特色がありました。

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画像引用元:Frekul(フリクル)

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画像引用元:SONALIO OFFICIAL WEBSITE

 

−既に2,000組のバンドが登録していたり、具体的にサービスが走っていたということは、当時から既にマネタイズはある程度うまくいっていた、ということでしょうか?

小濱 2,000組のバンドが登録し、サービス自体は動いていましたので、僅かではありますが収益化されていました。そして、さらにスマホアプリを開発することで、サービスの拡大をしていこうとしていたフェーズでした。僕達はこのサービスの未来を信じて、「共にサービスを作っていきたい」と考えました。スタートアップ起業にサービスの主導権を置き、シンプルに僕達は「技術(を)投資(する)」を行っていくことで、「サービスを共作していく」というお互いにフィット感のある関係性になることを目指したのです。結果、アプリがリリースして数日後に10万曲以上再生されるというアプリに発展しました。 既にある程度成功していて上場が現実的なものとして見えている企業に投資し、上場の手助けをする投資モデルもありますが、僕達は、今何かを実現したいと考えている人達の背中を押し、新しいサービスがひとつでも多く生まれる方に力を注ぐことで、新たなビジネスの可能性が生まれ、それによって日本全体の経済効果につながるという動きにつなげたいのです。

“自分らしく働きたいと考えている人達にこそ起業を勧めたい”

「起業」というワードに抱く感覚、それは人それぞれ、十人十色だ。

例えば、「起業してみませんか?」と言われたら、ちょっと身構えてしまったり、知人が「起業した」と聞いたら「この大変な時代にねえ…」と、起業したことを祝いながらも前途多難な未来を即座にイメージして、ネガティブな感覚を抱いたりはしないだろうか。また、大型投資の話が飛び交う空前の起業ブームが到来している昨今だが、実際自分のすぐそばで起こっている現実的な話として、昨今の起業ブームを捉えている人は少ないのではないだろうか。

局所的に起こっている「起業」というアクションが大々的にメディアで流れることにより、手を伸ばせばすぐにつかめてしまう様な、そして、まさにすぐそこで起こっている様な感覚にも陥ることがあるのかもしれない。しかし、「実は『起業』ってそこまで近しい存在ではないよね」、と我々は薄々勘付いているのかもしれないという可能性は無視できない。むしろそこまでカジュアルなものなのであれば、今の状況をはるかに超える空前絶後の起業ブームになっているはずだ。今、「起業」というアクションは、万人が簡単に踏み込める様なトピックではなく、そして、昔からある「起業」というワードと我々との距離感がそこまで狭まっていない可能性がある。

つまり、この予測は決して事実から遠い予測ではない、ということだ。

−小濱さんの所属するソフトフロントでは、「起業」そのものをもっと身近な存在にするために、先ほどの技術投資の他にもアクションを起こされているのでしょうか?

小濱 昨今、起業がブームになっているという空気感もでていますが、実際のところ、「自分が起業する」となると、まだまだ身構えてしまう方も多いのではないかと思います。僕達はもっとカジュアルに起業を選択できる様にバックアップしたいと考えています。技術投資を行うことと並行して、女性層の起業の背中押しとなる「コロコニ」というプロジェクトを立ち上げました。スポンサーとして、サムライインキュベートさんやWomanExpoとも連携してサービス形成を行っています。

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画像引用元:コロコニ

 

−なぜ今回女性層の背中押しをしようと考えたのでしょうか?

小濱 新入社員として、企業に入社、その後結婚し子供が生まれ産休・育休を取ることで長期の仕事離れをした女性が猛烈に働く様な場にまた戻るというのは精神・身体的にもなかなか難しいのではないかと思います。それに、幼稚園や保育園に預けたとしても当然育児は変わらず並行していますし、子供が熱を出したり、重めの案件を担当しているにも関わらず短時間で帰らねばならない日などもイレギュラーにでてくる可能性がありますから、バランスも非常に取りにくいという声も良く聞きました。そこで、自分の生活スタイルに合う形で働く、つまり「自分らしく働く」ために「起業」を選択したという数名の女性起業家のインタビューから、はたらく女性が選択肢のひとつとして起業をしやすい制度を設けたいと考えたのです。コロコニで3/19に行ったセミナーでは、「育児と仕事の両立の仕方」を軸に、「結婚・出産を機に離職したけど、もう一度働きたい!」「会社勤めでない新しい働き方ってどんなの?とワークスタイルを模索している」といった悩みを持つ女性の方々にノウハウ提供をしました。日経WOMAN EXPO TOKYO2015では100人を超える来場者を記録し大盛り上がりでした。「私にも起業ができるかもしれない!」という前向きな感想を頂いたりと、とても良い反応を得られたと思います。始まって間もないプロジェクトですが、今後も継続してノウハウ提供をしていき、弊社で行っている技術投資ともリンクさせて自分らしく働ける女性の数を増やしていきたいです。

“失敗を積み重ねたことで得たノウハウが財産となった”

ソフトフロントは新たな投資の形として、「起業家」の「同志」として、今まで蓄積されてきたノウハウを惜しみなく提供するというスタイルで、今もなお新規サービスの探査・育成・共作を行っている。「自慢できることではありませんが、僕達はたくさん失敗をしてきました。ですから、何をしたらいいのか、何をしてはいけないのか、というその場その場ですべき選択において、その経験で推し量れる幅は広いのではないかと思っています。」と小濱氏は言う。

失敗は、未来に対する行動のクオリティを上げる上での有効な武器だ。

これからリスクを背負って何かをしようとしている起業家にとって、失敗経験という財産を共有し、同志として戦ってくれる企業の存在は非常に心強いと言える。実現したいことがあってもそれを具体的な形にして世に出すことができずに困っている起業家や、構想を持っているがなかなか実現への糸口がつかめない人達にとっての背中押しの材料になる様、「投資」は従来のフローから脱し、さらに柔軟に変化していくという部分で、まだまだ可能性のある領域なのではないだろうか。

今、少しずつではあるが「投資」の形が変化しようとしている。考えていることを形にできず困っているのならば、小濱氏の様な活動を行っている人物に相談を持ちかけたり、そういった活動家・投資家・起業家が集うイベントへ積極的に参加してみてはいかがだろうか。

きっと、あなた(達)の背中を強く押してくれるはずだ。

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