食品破棄大国ニッポンを変えたい!「もったいないアクション」が日本の2万tの食材を救う

牡蠣は冬が旬だが1番おいしくなるのは春先になる。産卵の準備に入る3〜4月に身がたくさんの栄養を蓄えるようになり、ぷりっと太っているからだ。海の岩から「かきおとす」ことから「カキ」と言う名がついたと言われているが、いま日本で出回っている牡蠣はそのほとんどが養殖だ。養殖場から引き上げる際、牡蠣のまわりにムール貝が驚くほどびっしりとへばり付いているのをご存知だっただろうか。その牡蠣にびっしりと付いているムール貝がその後どうなるのか。どこに売られるのか。その値段は?

1月に東京丸の内にオープンした「築地もったいない プロジェクト 魚治」の総合プロデュースを務める株式会社エードットの伊達晃洋社長に話を伺った。魚治はエードットと「なかめのてっぺん」や「はまぐり屋串左衛門」などを手がける株式会社MUGENが共同で運営する”もったいない”魚を活用した飲食店だ。それぞれエードットが全体のプランニング、MUGENが店舗運営をおこなっている。伊達氏曰く「目標に対して150%以上の金額を売り上げる月もあったりと非常に好調」とのこと。オフィスビルなので夜に人が入ってくれるのかは不安があったそうだが、その予想を超えて客が入ってきているという状況だ。

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「築地もったいないプロジェクト 魚治」
おいしく食べられるのに陽の目を見ない“もったいない”魚たちを築地から毎日直送。その日によって入荷する魚が違うので日替わりで様々なメニューが登場する。

その要因として「いま思うと、時流に乗ったサービスだったんじゃないかと思います」と伊達氏。もったいないってネガティブなのではないか、捨てられてるものを出すの?や、店名からもったいないを外したほうがいいんじゃないかなど、スタート前はかなり厳しい声もあったという。「もったいない」という言葉が持つイメージが悪い印象を与えてしまい、10年、20年前だったら響かなかったコンセプトかもしれないが、最近は社会全体としてもったいないやモノを大切にするという空気感ができていることからも後押しになっているそうだ。

また最近は、考えながら食事する“頭で食べる人”が増えているという。「ひと昔前は安くてそこそこうまければよかったが、最近は頭で熟成肉のブームやワインを飲みながら薀蓄を語るように、食べるということは考えさせられること。そういう食材やコンセプトのお店に人が集まるし、魚治もなにがもったいないのかを知りたくなったり、考えさせられるところがいいところ」

日本の食品破棄物量は年間約1,900万tで、世界の食糧援助量である600万tの約3倍を破棄していて、その量は世界第1位だ。魚治の仕入れ先である東京中央卸売市場(築地市場)のデータによると2012年度、同市場では約3万9000tの廃棄物を出している。そのうち「あら」とよばれる魚腸骨や発泡廃棄物、産業廃棄物を除いた、まだまだ食べることができる一般廃棄物は約2万tにものぼった。なかには鮮度は良くても規格より少し大きい(あるいはほんの少し小さい)、網傷など含め輸送中につく傷、穫れ過ぎ、旬外れといった理由から取引されず残り、廃棄される魚介も非常に多いという。

冒頭に出てきたムール貝にひとまず話を戻すが、牡蠣の養殖でおまけについてくるこの貝は漁師の手によってすべて海に捨て戻されてしまうそうだ。買い手がつけば値段はつくし、もちろんおいしく食べることができるが、「牡蠣の養殖場」だからムール貝は売らないそうだ。もったいない話はこれだけではない。うには産地できれいに箱の中に整列させられた状態で輸送されるが、その途中で箱のどちらかに少しでも寄ってしまっただけで市場に乗ることはできない。高級料亭でしかお目にかかることができないような抜群に良い本マグロなども買い手である店側の都合で急遽取引がキャンセルになるとそれだけで廃棄対象になることさえあるという。さらに、空輸するときは制限重量がきまっているので、料亭で出せる品質にも関わらず超えた分は切り落とされ、そのまま捨てられてしまう。

「あるプロジェクトで築地の仲卸の方とお仕事する機会があり、捨ててしまったり、価格とは呼べない無料同然の値段で業務用に魚を売ったりしているという話を聞いて、次の週には企画書を作って持って行きました」と語る伊達氏。きっかけとなったもったいない話をしてくれた築地No.1の仲卸である「山治」は魚治のメインの仕入先でもあると同時にプロジェクトを進める上でのよきアドバイザーだという。エードットは1号店の魚治を起点に「もったいないアクション」という全国の“もったいない”を“おいしい”に変えるプロジェクトを今後はさらに拡大してく予定だそうだ。

魚治のオープンからメディアでも多数取材が入ったことで、その知名度は全国にも広がりつつあり東北の南三陸からの依頼も届いたという。もともとは食品系のSP(セールスプロモーション)を中心としたソリューションを提供するエードットだったが伊達氏はかねてから「食産業をより良くするという取り組みは昔からやっていて、少しでも日本の食産業に貢献できればなということは思っていた。それと同時に自分達でなにかコンテンツを持たなければということも感じていた」と話す。すぐにでもビジネスチャンスになりそうな、まさに「もったいない話」を伊達氏はすぐに実行に移し「もったいないアクション」のプロジェクトを始動させた。その取り組みは少しずつ日本の「食」を変えようとしていて、今後これはより大きなうねりとなっていくのだろう。魚介だけでなく、まだまだ全国には人の手に届けられるべき食材が眠っていて、それらの“チャンス“をそのままにしておくのが1番もったいないと彼は知っているのだから。

18 comments

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