【SOCAP15 キックオフイベントレポート(後編)】Impact HUB Tokyoは社会的インパクトの震源地になりうるか

【SOCAP15 キックオフイベントレポート(後編)】Impact HUB Tokyoは社会的インパクトの震源地になりうるか

2015年7月3日
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Black&White

(写真提供:Impact HUB Tokyo)

 

“世界をもっと持続可能で、エキサイティングなものに”

2013年2月11日、Impact HUB Tokyoは、グローバルなアントレプレナー達のコミュニティである世界最大規模のグローバルなコワーキングスペース「Impact HUB」の一員として国内初の施設として、東京・目黒にある440平米の印刷工場をリノベーションしオープンした。「Grow(育つ)・People(コミュニティ)・Space(場)」という3つの観点を重んじ、「Questioning(現状に対する問いかけ) + Action(行動) = Impact(インパクト)」”志あるチェンジメーカーが世界とつながる秘密基地”をコンセプトに、起業家が集まる”コワーキングスペース”という枠組みを超え、世界に変革をもたらし、互いに学びや知識、経験、ネットワークのシェアを実現する有機的なコミュニティを創ることを目指す場として機能している。

 

“SOCAP(Social Capital Markets)とは?”

SOCAP=Social Capital Marketsとは、「社会にインパクトを生む起業と投資を実践するリーダー達の為の参加型カンファレンス」である。 Impact HUBのネットワークが実施し、世界中から2,000人を超える起業家、投資家、財団、企業 家、政府関係者がサンフランシスコに集結。起業と投資の実践から得た学びを共有する「場」で、セッション数、国籍、日数ともに本分野・最大規模の国際会議である。(Impact HUB Tokyoは、2012年からJapan Teamを結成して現地へ送り込むという活動をしており、「SOCAP15キックオフイベント」はその参加メンバーを募り、そしてこのイベントの良さを知ってもらうという目的がある。)

社会的インパクト投資の最前線SOCAPの持つ「熱」

梅雨らしい天気で、シトシトと雨が降る中HUB TOKYOに到着。

開始30分前から40人近くの人数が集まっており、SOCAP15キックオフイベントに参加する面々を見ると、日本人だけでなくかなり多国籍で、全国85都市に存在するというImpact HUBのグローバルネットワークの太さがその集客の様相に色濃く現れていた。イベントが始まる前からカフェラウンジでは様々な活動について、各々がショートプレゼンを始めている等、その積極性・活動力も垣間見れるなど、このイベント自体に深く興味を持っている人の「熱」はイベント開始前から既に右肩上がりといったところ。

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受付を済ませ中に入ると、Welcome Drinkが配備され、名刺が飛び交う様なセミナーライクな感じは一切なく、友人同士が気軽にお互いの話し合うといった空気が緩やかに流れていた。

「SOCAP15キックオフイベント」の開催をホストの岩井氏が宣言し、「隣にいる人と、今日どんな目的で、またどういったことからSOCAPを知って来られたのか、軽くコミュニケーションしてみてください。」という一言で、場内が一気に湧き始めた。ここに来ている人たちは全員目的意識がハッキリしているというイメージがその熱気からも伝わって来る。

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そして、その後、岩井氏から「近年、社会的インパクト投資と呼ばれる新たな投資の在り方が世界的に注目されていること」、「経済的なリターンを追求しつつも、社会的にインパクトのある事業に投資するというこの新たな投資のカタチがこれまでの『ソーシャルな活動は非営利で行う』という日本の文脈における一般的観念を大きく覆す可能性を秘めていること」、「Impact HUB Tokyoがこの新たな投資の潮流に早くから注目し、毎年サンフランシスコで開催される、この分野における世界最大のカンファレンス、Social Capital Markets (通称SOCAP)に、 2012年からJapan Teamを結成して送り込んできたこと」、「グローバルな舞台に日本からチームとして飛び込むことで、参加者が帰国後にそれぞれのフィールドでより大きな視野をもって社会にインパクトを生み出していくというインパクトあるムーブメントを日本で起こしていきたいという想いがあること」について、情熱的に語られた。

過去のSOCAPについては、こちらの動画で紹介している。

(動画提供:Impact HUB Tokyo)

※ SOCAPや社会的インパクト投資についての詳細は【HUB TOKYO report(中編)】参照

過去のSOCAP参加者が語る、社会的インパクト投資の本音

岩井氏からのSOCAP解説が終了し、いよいよ当日の目玉となるトークセッションが始まった。今回は過去にSOCAPへ参加した日本財団の工藤氏がImpact HUB Tokyoのホスト山口氏と「インパクト投資の本音に迫る」という内容。社会的インパクト投資が今日本でどういった位置づけとなっていて、どの程度現実的な話として推進されてきているのか、といったリアルタイムで来場した方たちも当然気になっているポイントだ。

(写真提供:Impact HUB Tokyo)

山口氏(以下、敬称略) ここ最近「社会的インパクト投資」というワードをみなさんよく聞かれる様になったと思いますが、まさにその動きを作られている震源地にいらっしゃる工藤さんには、その点を掘り下げて本日は色々とお聞きしたいです。現在の活動内容について教えていただけますか?

工藤氏(以下、敬称略) 今私は日本財団の社会的投資推進室というところにおります。2012年にSOCAPに参加をした経験があるのですが、当時私はベンチャーフィランソロフィー(成長性の高い非営利組織や社会的企業に対し中長期に亘り資金提供と経営支援を行うことで事業の成長を促し、社会課題解決を加速させるモデルのこと)のファンドを立ち上げたいと思っていました。それから3年経ち、今は社会的投資の分野で主に活動をしています。その内容としては大きく3つあり、1つは、単年度で終わってしまうプロジェクトが多いという状況を中・長期で継続していく動きに変え、組織に対してお金をつけていこうというベンチャーフィランソロフィー基金というファンドの運営です。2つめはソーシャル・インパクト・ボンドで、行政と連携して課題解決を促進していく仕組みの促進。3つめは、G8社会投資タスクフォースの日本事務局における活動に携わっています。

山口 工藤さんはインパクト投資の議論を盛り上げ各方面とのコンセンサスをとったり、地方自治体やNPOへのソーシャル・インパクト・ボンド導入など現場レベルでミクロもマクロも両方担当されていると思うのですが、その活動を通して感じるところなど教えて頂けますか。

工藤 今日横須賀市で「養護施設に入ってしまう子供を、どうやって家庭的な養護につなげるか」というトピックについて話し合ってきたのですが、「0歳から18歳まで施設にいるだけで公的コストが8,000万〜1億程かかっている、施設に入ると愛着形成がうまくいかない・施設から出されたあとのケアが充分ではないためホームレスになる確率が、家庭で育った子供の70倍近く上がってしまう」などの問題があり、それに対して我々の様な組織がまずお金を出して横須賀市がやれていなかった養子縁組を行うという活動をやってみせましょうということ、そして成果がでれば横須賀市からお金をもらえるという様なことができないか?という、まさにソーシャル・インパクト・ボンド導入のお話をしてきました。
しかし、行政と仕事をするということは本当に難しく、「子供をお金儲けのために使うのか?」という意見がでるなど、コンセンサスを取る部分でとても苦労しているという現状があります。反面、こういったやり取りの中で、どうやればエコシステムや政策として落とし込んでいけるのか、と考えさせられたり、同時に学ぶ機会が非常に多いので、今ハードルになっている部分に直面して向き合えている環境はとても良いと自分では感じています。

 

工藤氏は上述した横須賀市の養護施設が持つ課題に取り組んでいる他、長崎の就労支援や、高齢者の医療介護にも携わっているが、やはり行政との連携を取る上で共通認識・共通理解・共通言語というものを生成することがひとつのハードルとして存在していることがわかる。

他にも、

  • 行政以外でどういった手法を持って課題収集していくか?
  • 課題解決に対するソリューションを持っている人たちに対して、どこからリスクマネーをとるのか?
  • 財団だけでやるとリーチが限られてしまうが、お金の流れを変えていくためには誰をどう巻き込めばいいのか?
  • 行政領域にプライベートエクイティの動きがなく、アクションが遅い点をどう外から改善していくのか?

など細かく言えば、問題はまだまだ山積みである。

「行政自体は今地域創生ボンドといった活動に関心があるので、我々の動きもまずこういった関心のある領域で実績を積み上げていくなど、お互いの共通理解を広めていく上でどう活動していけば良いのか、日々模索して活動しています。」と工藤氏は言う。一朝一夕に合意は取れず、未だ行政との関係性はバランスを見ているステージだが、その突破口を探し、また創造するための試みとして、Impact HUB Tokyoの様な「場」であったり、日本人がSOCAPに参加したりする「行動」であったりと、現実的な活動の波が今まさに拡散し始めている。「個々が持つ能力がソリューションとなり、それが団結し育み合うことで、共有された課題に対して全体がソリューション化していく様にする」というフローを体現する上で、こういった「共有するためのイベント」は非常に大切な「場」であることは間違いないだろう。

“体験が課題解決の糸口となる”

工藤氏のトークセッションに続いて、過去のSOCAP参加者である3名による経験のシェアタイムがスタート。

市川裕康 株式会社ソーシャルカンパニー 代表 / ソーシャルメディア・コンサルタント
(写真提供:Impact HUB TOKYO)

 

灘仁美 Tokyo+Acumen 代表

 

 

懇親会では全員が積極的に課題共有し、そのネットワークを広げていた。

3名共、一貫して語られていたのはSOCAPに実際に行って「体験」する内容をどう受け取るかは個人レベルで全く違ったものになるが、その「体験」を通して、自らの血肉になる様な出会いであったり、膨大な量のアイディア共有を経ることで自らの原点に立ち戻れたり、先のステージへ進むキッカケが得られたり、仲間を発見できたりと、日本だけでなく海外のパスを利用することで今までになかった発想を生む源泉に出会えるというメリットがこのSOCAPにはある、ということだった。各々の目的意識が明確である点も、その「体験」を良い方向へと昇華できたポイントとなっている様だ。

各々立場は違うけれども、個人がそれぞれの立場で社会の現状に疑問を投げかけ、それに対して行動していこうという共通の意志を持った人たちが集う「場」Impact HUB Tokyoは、これからも自発的にシナジーの生成を積極的に行なっていくだろう。そして、一人でも多くその輪の中に加われば、本当に日本は予想もしない形で成長していくのではないだろうか。

ここにはそう感じさせてくれる未知なる可能性がある。


Impact HUB Tokyo

〒153-0063 東京都目黒区目黒2-11-3 印刷工場1階

Hours of operation
平日 9:00-22:00 土日 10:00-20:00

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